「予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」」を読む。

最近よくキャリアについて発信してるyou tuberの「勝又健太 a.k.a. テック系Youtuber」氏がtwitterでお勧めしてるのを見て読んでみた。ユーモアあふれる筆致で読み物としても勉強になるという意味でも面白かった。著者は学生時代に大きなやけどを負ったことをきっかけに、「痛みの研究から視野を広げ、経験を積んでもそこから学ぶことなく失敗を繰り返してしまう状況」について研究を重ねていったという、行動経済学の第一人者。従来のミクロ経済学がモデルとしていたような合理的な人間なんてかなり眉唾もので、実際の人間はこんなに不合理に行動しがちなんだよ、というのを実験を通じて解き明かすという内容。不合理なんだけど、きちんとそれを自覚しておけばその不合理な行動を回避することも出来るというのがミソ。将来のことを見通して貯金したり、保険をかけたり、ダメな生活習慣をいつまでも続けたりするのは極めて人間的なので、それを改めていくために、また箇条書きにして、今後の人生の頭の隅に置けるように気をつける。
・給料に対する男の満足度は、妻の姉妹の夫より多く稼いでいるかどうかで決まる。(比較しやすい対象がないと合理的な判断が出来ない。相対性の連鎖)
・受給と供給の誤謬 「トムは人間の行動の偉大なる法則を発見した。人に何かを欲しがらせるには、それが簡単に手に入らないようにすればいい」大した需要がないものでも、高い金額や広告の見せ方で貴重性をすりこむことが出来る。
・恣意の一貫性 「最初の価格はほとんど「恣意」的で、でたらめな質問に対する答えにも影響されうる。しかし、いったんその価格が自分の中で定まると、ある品物にいくら出すかだけでなく、関連のある品物にどれだけ出すかまで方向づけられてしまう」
・仕事と遊びの曖昧さ 「仕事というのは人がやらなければならないことであり、遊びというのは人がやらなくてもいいことであると理解したことだろう。‹略›イギリスには、夏になると四頭だとの客馬車で毎日30キロも40キロも移動する金持ちがいる。ひどく金がかかって、金持ちにしかできないことだからだ。もしこれに賃金を払うと言われたら、金持ちの特権だったものが仕事に変わってしまい、誰もこんなことをしなくなるだろう」
・ゼロコストのコスト 「何かが無料だと、わたしたちはだれでもちょっとばかり興奮しすぎること、そしてその結果、最善の利益をもたらす決定とはべつの決定をくだす場合があることだ」
・社会規範のコスト 「託児所で、子供の迎えに遅れてくる親に罰金を科すのが有効かどうかを調査した。そして、罰金はうまく機能しないばかりか、長期的に観ると悪影響が出ると結論づけた。‹略›罰金を科したことで、託児所は意図せずに社会規範を市場規範に切り替えてしまった。遅刻した分をお金で支払うことになると、‹略›ちょくちょく迎えの時間に遅れるようになった」これは二酸化炭素排出権取引にも言えること。後、プレゼントは経済効率が悪いものの、社会の潤滑油としては重要。感謝の気持ちを現金で示しても相手を怒らせるだけ。
・予測の効果 客が食ってるのはラーメンじゃない、情報を食ってるんだ、って例の名言の奴ね。蘊蓄を先に知ってからサービスを経験して、その通りだと納得するという消費形態。
・価格の力 高いものほどプラセボ効果で実際に満足度が高まるという例のやつ。
・公共財ゲーム 「囚人のジレンマ」と同じような理論。協力すれば最も良いサービスを受けられるのに、個々人の利益を追求する結果皆が損をする。
・不正行為は、現金から一歩離れたときにやりやすくなる。

ビッグデータ・コネクト」を読む。

面白くてしょうがない藤井太洋作品。本作はジャンルとしてはSFでなく、現代の警察小説。タイトル通り、ビッグデータを扱った作品。これまでの藤井作品と同様、非常に魅力的な敵役というか天才的な人物が登場し、割と平凡な主人公が公立図書館の私企業との提携を進めるエンジニアの誘拐事件と、その背後に潜む官民混合の巨悪に挑むという作品。警察組織の捜査方法だったり、ブラックIT企業の実体とかヤバい現場の描写とかもリアリティがあってドキュメンタリー的にも楽しめる。他の藤井太洋にも言えるが、本作も非常に映像映えするので、ぜひ映画化してほしい。武岱をオカダカズチカとかに演じて欲しい。
ちょっと前にスノーデンのドキュメンタリー映画を観たこともあって、本書で取り扱われるビッグデータの使われ方には月並みだけどかなり怖いなぁなんて感じた。高速道路に取り付けられた搭乗者の顔情報や車両情報を収集し続けているNシステムなんて名前も知らんかったし。街中に付けられた監視カメラも便利だけど、映らずに移動することなんてほぼ不可能になりつつある。法律も未整備だったり穴があったりして、マイナンバーみたいな情報を悪用されるリスクは自己防衛だけでは管理しようがないし、何より情報が漏れて悪用されたところで本人が気づくことすらできない。本書でも「同性愛者や外国人などの差別に用いられたらどうするつもりなのだ」という件りが出てくるけど、安全志向で全てのライフログを取り続ける社会はマイノリティを異物として排除するような社会と隣り合わせだってことの意識を持っておかなきゃなと改めて感じた。

わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門〈GitHub、Bitbucket、SourceTree〉」を読む。

これもマンガとしては滑ってて面白くないんだけど、とりあえず絵や図がたくさんでポチポチとボタンを押すだけでGitの使い方が多少掴めた。昔VSSを使ってバージョン管理はやっていたので、それのインターネット版って感じなんだな、という。誰でも自由にアクセス出来て、公開しているソフトウェアとかを見ず知らずの人がフォークして改良してくれたりとかOSSの思想が生きてるし、案件のメンバーにプルリクエストしてレビュー依頼ができたり、コミュニケーション手段としても機能しているっていうのがVSSの時より進化してるかなという。後、この本の内容自体がGit上にリポジトリされているという何かメタ小説みたいな構造になっている。

「もし小泉進次郎フリードマンの資本主義と自由を読んだら」を読む。

字多くて読みづらい。絵も非常に稚拙でマンガとしては成功してると言い難い。けど、フリードマンの「資本主義と自由」を元ネタとして、恐らく原作は非常にかっちりと政治的、経済的な考察がされた上で描かれているんだと思う。小泉進次郎を軸にして、ハイパーインフレが起きて国家破城の危機に面した日本を描く。実在の経済評論家や政治家がそれと分かるように微妙に名前を変えてキャラとして登場しており、普段通りの主張で笑える。未曽有の事態に対処する日本、という点でどことなく映画「シン・ゴジラ」に近いかも。

「システムインテグレーション再生の戦略 ~いまSIerは何を考え、どう行動すればいいのか?」を読む。

「人月を前提として収益構造はもはや限界。そんな時代に生き抜くための3つの戦略と9つのシナリオを解説。」という紹介文通りの本。どんづまりになったSIer色んな図やデータを基に客観的な分析をしており、さらに感情的にならず冷静に課題と解決方法を模索しており、似たようなテーマを挙げているが前に読んだ木村岳史氏の本より大分良質。しかも、図はフリーでダウンロード出来るという気前の良さで、この図をプレゼンや説明に使ってSIerを変えてくれ、という気概を感じる。SIerの中にいる人間としても非常に納得のいく内容だったし、本書で言われるような課題をせめて個人的には克服してSIerを抜けだせる力をつけようと思った。

付加価値率=売上-外部調達コスト
外部調達は自社でのコントロールが難しく、市場の影響に大きく左右されるが、自社のコストはコントロール出来るので、業界ごとに戦略が変わってくる、という話。

システム開発の購買決定要因
Quality … システムの品質が高いこと
Cost … 競合と比べて費用が安いこと
Delivery … システムを安定的に導入出来ること
クラウドの導入によって、優先度がD>C≧Qになりつつある。

装置産業」から「サービス産業」への転換
開発や構築、運用管理が、自動化されたサービスに置き換えられようとしている。

「センサーやカメラが組み込まれた冷蔵庫がネットにつながり、入ってるものを人口知能が常時把握できる仕組みが実現すれば、冷蔵庫という「モノ」は無料で提供され、食品の自動配達や食材・レシピの提供という「サービス」で儲けるビジネスが登場するかもしれません。」

「インフラビジネスは上流の仕事のニーズがますます重要に」圧倒的な資金力と技術力を持つ大手クラウド事業者と真っ向勝負することは現実的でないので、どう使いこなすかが重要になる。

アジャイル開発の本質は、「全部作らない」ことを理解し、それを受け入れること。それが、ウォーターフォール開発と本質的に異なる点。」

「開発スピードと本番適用を同期化させるDevOps」

プログラマが知るべき97のこと」を読む。

面白かった。タイトル通り、世界的に著名なプログラマがプログラミングの心構えを2,3ページのコラムとして書いたもの。日本からはRUBYの開発者でもあるまつもとゆきひろ氏等が参加。特に響いた言葉を備忘録としてまとめておこう。

エドワード・ガーソン 「関数型プログラミングは参照透過性を高める」
・フィリップ・ヴァン・ラーネン 「コーディング規約を自動化する →自分の書いたコードを私物化出来ないようにするため」
・ヨルン・オルムハイム 「美しいコードとは、突き詰めればシンプルなコードのこと」
・ジョヴァンニ・アスケプローニ 「コンポーネント、ライブラリ、フレームワークを組み合わせて作る。」
 ・「インフラコードよりもビジネスドメインに注力する。」 
 ・「広く使われているコンポーネントフレームワークの方がバグが少ない。」
 ・「特定のツールに依存するとベンドロックインしてしまうので、保守性、パフォーマンス、拡張性などを考慮して適切に使う。」
 →要するに、最低限のツール導入から始める。という戦略。
 ・「見積もりとターゲットとコミットメントの違いを明白にすること。」
 →いつまでに何をする、とコミットメント(約束)するのと、何をするために何日かかる、という見積もりを取り違えてはならない。
・スティーブ・P・バーチャック 「すばやくデプロイ、こまめにデプロイ」
 →コストを抑えるため。
・スコット・マイヤーズ 「正しい使い方を簡単に、誤った使い方を困難に」
 →誤った使い方がそもそもできないような設計を心がける。
・カーク・ペパーディーン 「ポリモーフィズムの利用機会を逃さない。」 →if then else箇所はポリモーフィズムで代理できないか考える


・マイケル・フェザーズ 「APIを提供するときは、API自身のテストだけでなく、必ずそのAPIを利用するコードのユニットテストも書く。」
・ヨハンネス・ブロドワル 「無駄な警告を排除する。」→コスト削減のため。必要なログが埋もれてしまうリスク。

ニール・フォード「橋のように形あるものをテストするのは容易なことではありません。(略)一方ソフトウェアの場合、とりあえず作る、ということにかかるコストは橋などに比べると圧倒的に安くなります」

ウォルター・ブライト「リンカは魔法のプログラムではない」

ニクラス・ニルソン「ステートに注目する」何か操作しようとすれば、まず現在どのステートにいるのかを確認する必要があります。その時々のステートによってできる操作とできない操作があるからです。

和田卓人「不具合にテストを書いて立ち向かう」
(テスト駆動開発について)不具合の修正時には必ず先に不具合を再現する自動テストを書いてから修正する。

「恋愛工学の教科書 科学的に証明された恋愛の理論」を読む。

Voicy聞き始めて知ったゴッホという人の語る恋愛工学とやらに興味を持って著作を読んでみた。全然「工学」っぽさはない。自分だけのモテ理論だけじゃなく普遍的な理論だ、なんて言ってるけど、ナンパや女性とセックスするまでの過程で有用な技術を単に心理学の理論(決して参照する論文などはない)とかで学術的な言い方にして権威づけしてるだけでしかない。本書でも女性を「女の子」とまるで自分より劣る子どものような表記をする辺り、女性が意志を持つ人間であるという意識も薄いし、女性を(ほとんどルックスのみで)ランキング付けして新規開拓や既存のキープみたいな表現をする辺り、人間的には全く尊敬・同意できないなというのも分かった。ただ、著者自身が認める通り「非モテ」であった過去の体験から自分の恋愛戦略を見直さなければダメだなと思うことも多々あったので、忘れないようにメモっておく。
・「Good Genes」か、「Good Dads」かどうか。
 →進化心理学がどうの、と権威づけしてるけど、要は相手にハラハラドキドキを提供出来るか、安心感を提供できるかって話ね。
・「ルックスやステータスよりも、メスにモテているオスがモテる」 →グッピーの実験例があるらしいけど、要はモテないのはモテないからだ、というお話。
・「ファンダメンダルズバリュー」
 →企業分析とか投資で使う言葉だけど、ここでは「見た目」と「収入」という基礎部分がないと恋愛市場で弱いよね、と。
・「非モテコミット」と「フレンドシップ戦略」
 →これはちょっと響いた。非モテがやってしまいがちなアプローチはやめなきゃいけない。友達から徐々に恋人になろうという戦略はしちゃいけないという。一人にだけ過剰に好きになると相手にも重いので、数打ってみようぜ、というものね。特に若い女性と若い男性だと圧倒的に女性の方が恋愛強者という話も納得感あった。
・「気づいたらなんとなくホテルにいた」なんてことはありえない →まぁ、そうだよねと。デートコースに関してはあらかじめ逆算してきちんと用意しておこうねという話。
・「いきなり褒めない」 →いきなり褒めると舐められやすいので、軽くディスる位の会話ができた方が良いと。褒めるなら容姿やステータスでなく、行動を褒める。かといって露骨な自慢とかはしないと。
・「デートでは安心感を与えること」 →友達的な安心感ではなく、異性としての安心感を提供できるように心がける。
・過去の恋愛話は意外といける。 →昔のドキドキ感を共有できたりして、確かに親密感出るよね。
・「言い訳を作ってあげる」 →たとえ彼氏がいる女性でもフリーの女性でも、やむを得ないような状況を作ってあげる優しさ。