バトル・オブ・ザ・セクシーズ」を観る。

新文芸坐にて。面白かった。1973年に実際にあった、当時の最強女性テニスプレイヤー、ビリー・ジーン・キングと、往年の最強男性プレイヤー、ボビー・リッグスが男女の威信をかけて戦うというテーマの興業的な試合について描いたもの。同時に、同性愛者でもあるビリー・ジーン・キングによる性的少数者であることの社会の軋轢なんかも描き、現代にも通ずる重層的な話となっている。主演はエマ・ストーンとスティーブ・カレル。後、「アイ、トーニャ」と同じく70年代の懐かしい音楽やファッションも見もの。
映画は重いテーマを扱ってはいるものの、コメディタッチで軽く楽しめる。スティーブ・カレルの道化っぽさもいい味だしてる。一応本筋の試合に向けて「ロッキー」みたいな厳しいトレーニングシーンとかもあるんだけど、試合自体は一進一退の手に汗握る接戦という感じもそれほどなく、割とあっさり勝敗が決まった感じもしてそれほどカタルシスもなかった。けど、本作が描かれた社会背景についてはやはり気になって悶々と考えてしまった。
当時はウーマン・リブとして呼ばれていたような、女性の社会での扱いが今では考えられない位酷くて驚いた。トーナメントの優勝額も男子の8分の1まで抑えられていたとか。ビリー・ジーン・キングはプレイヤーとして優れていただけでなく、先駆者としてこのような不平等な仕組みにノーを付きつけ、自分たちで運営する新しいテニスの団体を立ち上げたという活動も素晴らしいと思った。ちょっと前に観た「デトロイト」とか「私はあなたのニグロではない」だったり、公民権運動で知られるジョン・ルイス議員を描いた「MARCH」だったりを思い出す。性別や人種など人の属性に関する変数が多く、アメリカ社会の複雑性を改めて意識した作品であった。