ランドスケープと夏の定理」を読む。

SF考証屋という面白そうな仕事をしている著者による初の著作。短編3つが収められているが、普通に時系列に沿って同じ世界線で語られるので3章に分かれた作品と言っていい。人間の意識を別の場所・宇宙に飛ばす技術とか、ボール宇宙という別の宇宙を計算機構として利用する技術とか、知性定理とか、量子論とか、理論の籠とか、きちんと数学や物理学の知識が必要なハードSF。ランドスケープとはあり得る宇宙の総体数のことらしい。最終的にはこの宇宙の物理法則をアップデートするという超壮大な話になる。あとがきで著者も述べているように、世界観はグレッグ・イーガンっぽい。だけど、強烈なマッドサイエンティストで世界最高の宇宙物理学者という実の姉をはじめとして、なぜか年上のお姉さま方が沢山出てきて気弱ない男主人公が振り回されるというハーレム物マンガみたいなノリで語られる。「千兆人の姉」に「ばかネルス!」と罵られるというパワーワードも飛び出す。