MERU/メルー」を観る。

超よかった。素晴らしい。「ヒマラヤ山脈メルー中央峰にそびえる岩壁“シャークスフィン"。この難攻不落の直登ダイレクトルートに挑んで敗れた3人の一流クライマーたちが、過去や葛藤を乗り越え、再び過酷な 大自然に立ち向かっていく姿を描いた、壮大なスケールの山岳ヒューマン・ドキュメンタリー。」言葉にすると確かにこの通りなんだけど、映像の持つ力が半端じゃない。インタビューを除いてすべての映像素材が山中で撮られたただの記録であるというのも衝撃的。演技でも演出でも何でもない、息をのむようなむき出しの自然と、死に瀕した人間が生々しく映し出されており、凄まじい説得力で抉られる。全体の構成としても、一度失敗した登山に成功するというドラマチックで凄いし、何より登山中の一つ一つの動作に圧倒された。全体の工程と食料事情、およびルートを計算しつつ、かつチーム全体のロープワークや疲労度を考慮しつつ、個人個人は岩壁や雪に踏みだすアイゼンを履いた足の一歩一歩、ピッケルで角度や場所を探り探り進んでいく様を観てると、極限の登山というのは最も死に瀕した空間でいかに生き残れるルートを辿っていくかのスポーツなんだなと改めて感じた。様々な変数が少しでも乱れると全滅する可能性が高まり、最善策を見極めて慎重に歩を進めても雪崩で無に帰すこともあるという。完全にマゾの世界だけど、生の充実感をここでしか感じ取れない、山に憑りつかれた人達がたくさんいるのも何となくうなずける気がした。本作の世界観は、マンガで言うと「岳」よりも「孤高の人」に近い。どちらも好きなマンガではあるし、本作は3人の超濃密なチームプレイの基に成り立ってはいるんだけど、なぜ事故や雪崩で死にかけて、メンターとなる大事な人を失って、責任ある立場となっても山に登るのかを問い続ける様がめちゃくちゃストイックでカッコ良かった。
監督はジミー・チンという本作の出演者でもあるクライマーであり写真家でもあり映像作家でもあるという才能の塊みたいな人。コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズタークの3人、instagramの写真も超最高だったんでこれからも追って行きたい。