ビッグデータ・コネクト」を読む。

面白くてしょうがない藤井太洋作品。本作はジャンルとしてはSFでなく、現代の警察小説。タイトル通り、ビッグデータを扱った作品。これまでの藤井作品と同様、非常に魅力的な敵役というか天才的な人物が登場し、割と平凡な主人公が公立図書館の私企業との提携を進めるエンジニアの誘拐事件と、その背後に潜む官民混合の巨悪に挑むという作品。警察組織の捜査方法だったり、ブラックIT企業の実体とかヤバい現場の描写とかもリアリティがあってドキュメンタリー的にも楽しめる。他の藤井太洋にも言えるが、本作も非常に映像映えするので、ぜひ映画化してほしい。武岱をオカダカズチカとかに演じて欲しい。
ちょっと前にスノーデンのドキュメンタリー映画を観たこともあって、本書で取り扱われるビッグデータの使われ方には月並みだけどかなり怖いなぁなんて感じた。高速道路に取り付けられた搭乗者の顔情報や車両情報を収集し続けているNシステムなんて名前も知らんかったし。街中に付けられた監視カメラも便利だけど、映らずに移動することなんてほぼ不可能になりつつある。法律も未整備だったり穴があったりして、マイナンバーみたいな情報を悪用されるリスクは自己防衛だけでは管理しようがないし、何より情報が漏れて悪用されたところで本人が気づくことすらできない。本書でも「同性愛者や外国人などの差別に用いられたらどうするつもりなのだ」という件りが出てくるけど、安全志向で全てのライフログを取り続ける社会はマイノリティを異物として排除するような社会と隣り合わせだってことの意識を持っておかなきゃなと改めて感じた。