「小説禁止令に反対する」を読む。

最近の日本文学からちょっと遠ざかってたなと思って読んだ一冊。そして、久々にいとうせいこう作品読了。創作論・SFものとしては面白かったけど、小説としてはちょっと不完全燃焼だったかな。2030年代の日本を舞台に、小説という形態の文章を作ることを禁じられた国で、随筆と言う形で小説がいかに詐欺的な文章かと否定しつつも自分の文章自体が小説的になってしまうという内容。色んなメタ的な表現をする実際の小説を取り上げ、逐一糾弾するのは面白いのだが、著者自身の身の丈に起きている事態というのがうまく読み取れなかった。いとうせいこう自身をモデルとしている男性が死の淵にいるというのは理解できたのだけど、最後は胡蝶の夢みたいなラストだったのかな?気になったフレーズは以下の通り。
・「書き手こそ、自分の小説の最初の読者だから」
・「自分が出てくる小説を、登場人物自身が読んでしまうとは」
・「読者は作中人物になり、作中人物は読者の立場に置かれる」
・二葉亭指名が語り手の身分を示さない語尾を作るにあたって、
敬語などの上下関係を感じない「過去形」で語る手法を作った。これは、当時の読者としては「どこに作者がいるか読者はまるでわからず、座標軸を見失ったような感覚」だったらしい。