フエンテス短編集「アウラ・純な魂」を読む。

フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)

フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)

なかなか楽しめた。コルタサルとかと比べると思ったよりライトな文章で、作品の舞台こそ違えどちょっと丸尾末広作品に通じるような怪しさ、不気味さがある。解説を読むと、フエンテスはメキシコ人としてのアイデンティティを模索し続けた作家であり、本書でも(あまり大々的には感じなかったけど)ヨーロッパ、ひいては西洋的な価値観とメキシコ本来のインディオ的な価値観のせめぎあいを描き出してるらしい。
タイトル通り、「アウラ」と「純な魂」が面白かった。次点は「チャック・モール」。「アウラ」は結末が読めるけど、夢と現実を越境するような描写の巧みさで楽しめる。あと、関係ないけど「アウラ」っていわゆるベンヤミンが芸術作品に対する力として呼んでた言葉かと思って、批評的な物語なのかなーと思ってたけど全然違った。普通に人の名前。