ディア・ドクターを見る。

ディア・ドクター [DVD]

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「ゆれる」の西川美和監督の作品ということで、結構期待してたんだけど
ゆれるの方が好きかなー。

この作品も悪くはないんだけど、もっと「ゆれる」で見せたような、人間同士の生々しいぶつかり合いを見たかったというか。
確かに鶴瓶の弱さ、醜さは圧倒的な存在感で持って画面に載るんだけど、瑛太の言うように「あの人は自分のことを話すような人ではありませんでした」で誰ともぶつからずに終わってしまうのはどうだろう。ぶつかろうとしてきた瑛太ともぶつかり合うことなくスルリとかわして、逃げてしまった。瑛太だってもっとドラマに組み込めそうな要素を抱えてるのに(ちなみに本作の瑛太はイマドキ感のある若者っていう設定なんだろうけどあんまりしっくりこない。演技が下手とかではないんだけど、醸し出す空気が「赤いBMW」を乗り回す子には見えない)、割とあっさりと共同体に順応してしまってドラマを盛りたてないし。

ただ、この逃げ方って今の自分にすごくリアルに見える描写でもあるんだけどね。何十人の命預かる仕事なんて、とうてい俺には出来ない。判断のミス、遅れが死につながる。医者ってハンパじゃなくきつい仕事だ。
真面目に赤ひげ先生やってても、過労が続くとある臨界点から空虚になってくるんだと思う。終わりの見えなさ。仕事が片付けた先から増えていくやるせなさ。一つ一つ丁寧に捌いていけるのは、健全な精神があるときだけだ。

ただ、作品の中で鶴瓶がついている嘘について「なぜ?」という部分が描かれないのはちょっと頂けない。なぜ、僻地を選んだのか?どうやって医療技術を習得したのか?辺りがきちんと読みとれなかったのでちょっと残念。

見ててはっとしたのは、ホームから電車に乗り込む時のシーンが、ゆれるのバスに乗るシーンとかぶってたこと。これは監督のしゃれっ気なんだろうか。この演出が好きなのかな。