「レコード・バイヤーズ・グラフィティ」を読む。

人生の大部分をレコードにささげた人たちの非常に濃ゆい生態を記した一冊。作中のアジアもののコレクターの「お金なんか要らない、すべてレコードに変えたい」というパンチラインに痺れる。

と同時に、自分はやっぱこういう人種じゃないなぁという気もする。もちろんレコードという媒体自体への愛はあるけど、基本的に俺はモノへの執着が薄い。というより、「所有」することへの欲求が薄い。モノにあふれた家より、ガランとした部屋が好きだし。
究極はスナフキンのセリフにある、「何でも自分のものにして、持って帰ろうとすると、難しいものなんだよ。ぼくは、見るだけにしてるんだ。そして、立ち去るときには、それを頭の中へしまっておくのさ 」
ってのが感覚としては近いんだけど、DJする時のフォーマットとしてはやはりレコードの感覚が好きなので買い続けている、という具合だ。
だから、売ることはあっても捨てはしないし(誰かがまた聴いてくれるのならそれはそれで嬉しい)、オリジナルじゃなきゃダメだとか、LPじゃなくて12インチじゃないとダメだとか、これおレーベルをすべてコンプリートしたいとかのこだわりがあまりない。カッコよく言えば、面白い音ありきなので。
もちろん音質が悪いレコードは嫌だし、ブートを買い続けるのは直接アーティストに届かないというのもわかるけど、結局中古で買うことが多いし俺の行動が音楽業界に与える影響なんてほんとに小さい。だから俺は俺の周りの人や自分が少しでも楽しめるDJが出来るように精進したいし、そのためにレコードをこれからも買い続けると思う。

本書の筋からは外れてしまったけど、でもレコードに魅せられ、レコードを軸に生きてる人達はほんとに楽しそうだ。もちろん代替するさまざまなメディアと闘いながらだろうし、食ってくには辛い面もたくさんあるだろうけど、幻の一枚を求めて治安の悪いアジアの片田舎のレコード屋まで探したり、アーティストの親族から情報を集めてアーカイブを充実させたり、その並大抵ではない情熱のかけ方は素直に素晴らしいと思う。そのバイタリティに尊敬する。