「グロリア」を観る。

「レオン」の元ネタになってるとの触れ込みで観てみたけど、「レオン」の方があらゆる点で格段に面白いと思う。
マフィアと関連のあるおばちゃんが、マフィアの金を横領して殺された一家の生き残りの少年(8歳)を預かることになり、マフィアからの逃避行をするというもの。

レオンとの差を軸にして書こうと思うが、まず主人公二人の魅力について。個人差はもちろんあるが、「レオン」の方が人間的な結びつきの描き方がうまいと思う。生き残った子(ナタポー演じるマチルダね)の年齢を思春期に引き上げたのは正解だった。「グロリア」では、子供が幼すぎて、グロリアに対して反抗したり甘えてきたり一貫性が見られない。ある意味子供らしいんだけど。家族を殺されたという事実に対して本人がどうしたいのかという意思が把握できない。
一方「レオン」は家族を殺された(正確には弟以外はキライって言ってたけど)マチルダの復讐劇である。強い意志があるから殺しのスキルを学ぼうと努力する表情にも、レオンに男性としての魅力を感じてみる表情にも、タバコをふてくされて吸ってる表情にも幅ができて、キャラの魅力につながる(ナタリー・ポートマンの名演)。「グロリア」の少年には、そのような魅力が乏しい。
同じことが庇護者の方にも言える。レオンはもともと観葉植物しか友達のいない孤独な移民の殺し屋であったが、マチルダと出会って初めて「守りたい」と思う対象が出来た。閉塞的でつまらない生活が偶然の事件をきっかけに一転して、一時の楽しい時間を過ごせた、という点でマチルダにも同じことが言える(似た者同士だからこそ、惹かれあったという)。
対してグロリアは、カタギとヤクザの中間的な世界に生きていて普通に社交性はあるし、もちろん母性に目覚めた部分はあるのだろうけど、物語を通して大きく「成長・変化」したように見られない。レオンとマチルダのような「共通項」もない。物語後も、彼女は奔放な生活を続けてそうだし。グロリアの粗雑な性格は魅力でもあるが、プロの殺し屋レオンと違い何度もヘマするので、物語の進行が行ったり来たり冗長な描写が多い。というか、敵のマフィアのボスが昔のオトコなら、子供連れ回して街中でドンパチ拳銃ぶっぱなす前に話付けに行けよという。
そして最後に敵の描写。これも雲泥の差なのだが、何より「レオン」にはゲイリー・オールドマン演じるジャンキーの警察官が最高に魅力的だ。俺が初めてレオンを観たのはマチルダと同じ年齢くらいの時だったと思うけど、鮮明に覚えているくらいインパクトがあった。「グロリア」の敵はボスも含め異様にヘッポコ集団で、素人のグロリア一人相手に悪戦苦闘してまったくしまりがない。「レオン」のような戦闘シーンの緊迫感は微塵もない。ボスも威厳も貫禄も魅力もない人物だ。

以上の点から、レオンは本当に名作だなと改めて再認識した。
本作で良かった点といえば、ニューヨークのハーレム始め80年の雰囲気をたっぷり味わえる点くらいだろうか。落書きだらけの地下鉄とか。