少年と自転車」を観る。

少年と自転車 [DVD]

少年と自転車 [DVD]

ダルデンヌ監督の現時点の最新作。やっぱり俺はこの監督の作品が大好きだし、本作も「らしい」作品だなぁと。被写体とカメラが近いというか、過剰な演出やBGMを排し、ナレーションなどを使って重層的に物語を構成するでもなく、カメラがたまたまそこに起きた出来事を撮っていた、みたいな簡素な作り。今後もぜひ追い続けていきたい監督だ。
物語は、父親に捨てられ孤児院(?)的な施設に暮らす反抗的な少年が、途中不良の道に行ってしまいそうになるも、懸命に振り向いてくれる女性と出会い、人との繋がりを取り戻していくお話。

本作の主人公の男の子は、にこりともせずにとても生意気で周囲に迷惑ばかりかけて甘えている。恐らくほとんどの大人は悲惨な境遇に同情は出来てもイライラするんじゃないかと思う。彼を見捨てず、何度も赦す里親の女性に首をかしげてくなる人もいるかもしれない。
でも俺は、奇しくも今回彼の父親を演じた俳優が主人公を演じたダルデンヌ監督「ある子供」でも、同じ印象を受けたことが強く残っていて、このチクチク刺さるような不快感が実は映画に目が離せない要因になっていると思う。
思慮が浅く、後先考えず自分の子供を他人に売り、無責任なその「子供」は、本作で「再就職の妨げになるから」と面と向かって子供に合う気がないと言う父親そのものに見える。そしてその息子である今回の主人公の少年も、その無責任さを受け継いでるかのように見えてしまう。しかし、この不快感あってこそ、終盤の「きちんと自分の非を認め、謝罪する」彼自身の姿が気持ちよく見られる。
それに、この主人公の子を攻める論調の意見には、大卒の上場企業に勤めるサラリーマンがNEETやフリーターを「甘え」だという論調に近いものを感じる。思春期に母も友達もおらず、唯一の支えだった父親に捨てられた絶望感がほとんどの人には想像もつかないはず(ハンターハンターのジャイロみたいだな)。それ自体を責めることはできないが、他人に対する想像力が足りないんじゃないか。誰もがそんなに強くないし、恵まれた環境にいるとは限らないのだ。