ロッカーズ・ダイアリー」を読む。

ROCKERS DIARY/ロッカーズ・ダイアリー

ROCKERS DIARY/ロッカーズ・ダイアリー

ちょっとさかのぼって自分の日記を見たところ、映画は2009年に観ていた。ストーリーとか演出ははちゃちいけど、音楽は迫力あっていいなーと思った印象は残ってる。本書はその映画作成秘話について書いたもの。
いや、とにかくこんな大変な制作環境ってないだろうね。常にトラブル続きで、毎日のようにスタッフか演者が喧嘩し、小道具のバイクは盗まれ、撮影を始めれば野次馬が集まって騒ぎ、何か仕事にありつこうと監督のホテルにまでうじゃうじゃと人が集まってくる。俳優もスタッフも素人ってのは差し引いても、こりゃー思ったようなシーンなんてそうそう取れないわ。現代の日本でもし仮に近所で映画撮影が行われてることがわかったとしても、邪魔しないようにおとなしく応援しよう、くらいが関の山くらいな気がする(あ、でも黒田硫黄の「茄子」で、スタッフ向けの食事作って金儲けする女の子いたな)。物珍しいってのはあるし、ジャマイカが独立してまだ十数年という混乱した時期というのもあるだろうけど、こんだけ色んな人がぶつかり合って怒鳴り合って騒げるというのは国民性もあるんだろうなぁ。それでも映画を作り上げた監督の、ひとえにレゲエ・ダブへの愛情が文章からも溢れんばかりに伝わってくるのが面白かった。「俺たちの音楽を盗みに来た白人め」とか理不尽な暴力や恫喝を受けながらも、ホテルの金庫に入れていた制作費を盗まれたりしても、彼は自分のワクワクをフィルムに残しておきたかったのだ。撮りたい音楽やシーンは決まっていて、後はそれらをつなぎ合わせるような物語があればいい、というような逆転した作りをしていたというのも面白い。初めてダブを聴いたとき、耳から音を聴くのではなく全身で浴びるような経験をしたのだ、みたいな証言も最高に痺れる。そういう音楽経験があるとのめりこんでしまうものだよね。
あと、改めて製作中の写真を観てそれが絵になるなぁと思った。ラスタマンたちがすごくかっこいいし、レコード屋だったり風景もすごくいい。リー・ペリーがブラックアークでミキシングしている時の写真とかもある。部屋に飾ってみたいようなステキな写真がいっぱいあるのだ。