「ヴァン・ゴッホ」を観る。

ヴァン・ゴッホ [DVD]

ヴァン・ゴッホ [DVD]

つまらなかった。長いし、だれるし、抑揚がなくて散漫としてる。いわずとしれた画家のゴッホが死に至るまでの数十日を描いた作品だが、この作品では、ゴッホは犬死にしたようにしか見えない。絵や芸術に対するこだわりや執着を描くことなく、あっさりカメラの映らないところで自殺してしまった。その割に、舞踏会のような(現在日本のクラブというかスナックみたいなところ?)で女の尻追っかけて一緒にダンスするシーンとか結構な尺割いて描いていて、何がしたいんだかさっぱりわからない。ゴッホに感情移入しにくいのはもちろんのこと、常識人として描かれていると思われる弟のテオにしたって兄を慕ってるんだか疎ましく思ってるんだかよくわからない。いや、いい年こいてニートの兄を疎ましく思ってるんだろうけど、特に兄弟の関係性が物語を通じて何かに昇華することなく、ホントに道半ばで兄の死によって途絶えてしまう。ゴッホに思いを寄せる金持ちの一人娘も、ゴッホの死によってなんとなく美化されてるけど、ゴッホは君のこと歯牙にもかけていなかったように描かれてるんだけど。全体的に、ゴッホの振る舞いは、過度の飲酒や女遊びと借金癖など、石川啄木的なナルシシズムと甘えが全面的に感じられて、観ていて気分が悪くなる。せめて、絵に向かうときだけは超絶的な集中を見せてくれたりするシーンがあれば面白いと思うだんけど、絵を描いてるシーンは全体の2時間半の内10分にも満たない位なので、ただのクソ野郎にしか見えない。ていうか、ビクトル・エリセの「マルメロの陽光」見習えよ!あの作品は逆にほとんど絵を描いてるシーンしかないのだ。
唯一いいのは、フランスの田舎の景色。ゴッホが外に出て田舎道を見ながら絵筆を走らせてるシーンとかは綺麗だった。もっと、こういう細部の描写を大切にしたほうが面白くなったと思うんだけどな。