「紙の月」を観る。

これも同じく目黒シネマにて。ゴーンガールよりも面白かった。良家のお嬢さんで、夫と幸せに暮らしていたはずの銀行勤めの女性が、ふとしたことから不倫に陥って若い男と暮らすために巨額の横領に手を染めていくというお話。監督は「桐島」の吉田大八で、原作は角田光代。しばらく読んでないなー。

ちょっと似てるかなーと思ったのがコーエン兄弟の「バーバー」だろうか。ふとしたことから犯罪に染まり、どっぷり浸かって抜け出せなくなり破滅していくというお話。さりげない日常の描写が丁寧で、映画的な楽しみに満ちている。主人公の宮沢りえが不倫にはまっていき、段々と良いコートに身を包み化粧をしていく様子とか、劇中でも言われてる通り「幸せオーラ」を滲ませてるし、不倫相手の大学生が金を手にして段々と嫌な奴になっていく様子を、高級なホテルのホテルマンに対するタメ口での指示とかに表わしたり。
一番の見せ場は横領が発覚し、小林聡美とお互いの人生観を戦わせるシーン。正反対に見える二人とも実はベースの考え方は似ていて、自分の狭い世界の外側を体験してみたいと思っている。偽物の「紙の月」と知りながらやりたい放題にやった宮沢りえ小林聡美のどちらが幸せなのかは本人たちにしか判断できないが、観客としても個人の価値観で大分変りそうで面白い。
あと意外と良かったのが大島優子。なんか先日大島優子の泣き方の演技がひどいとかいう記事を見かけたけど、全然演技うまいと思う。本作では次長と不倫関係にあって帳簿の裏工作をしながら、ちゃっかり地元の公務員とゴールインするという当時の「イマドキ感」あふれる女の子を演じており、すごく存在感ある。