「プリンス論」を読む。

プリンス論 (新潮新書)

プリンス論 (新潮新書)

面白かった。プリンスファンを自称するものとして、この位は知っておきたいというデビュー当時からのアーカイブに対する音楽的な評価と、主要なアルバムを出すときの当時のポップミュージックシーンとの関わり(例えば同世代のMJやマドンナとの共作だったりだったり、オファーはありつつも結局参加しなかったUSA.for Africaのプロジェクトだったり。)に対して作家論としてプリンス自身の心境を予想しつつ分析していく内容。プリンス自身がインタビュー嫌いで、あまり影響を受けた音楽や自分の音楽スタンスや思想を声高に宣言する人じゃないのもあって、こういう分析は面白い。そういう、一ファンとしての目線と、西寺郷太という一作曲家としての分析がうまく溶け合っていて楽しめる文章になっている。音楽的な面から言うと、俺も大好きな「kiss」とか「black sweat」とかが「ベースのない密室ファンク」として紹介されていたのも印象的だった。プリンス論としては、直近の「art official age」の世界感にに対して、「エホバの証人の信仰を捨てたのでは?」という分析をしており、なるほどそうなのかも、と思わせる。

※プリンスは自分の楽曲をネット上で自分の意図しない形でアップされるのを嫌っているので聴きたい人は自分の意思で彼の楽曲を買ってください。

決して小難しい音楽用語も出てこないし、かといって社会学的な固い言葉で分析することもせず、それでいてロッキンオン的な妙にポエミーな作家論にもならず、適度な距離感でプリンスの人格と音楽的なカッコよさを熱のこもった文章で(著者にとってベストライブは東京に来た1991年のプリンスライブとのこと)紹介してくれる。プリンスファンを自称するものなら読んで損はない秀作。