もらとりあむタマ子」を観る。

監督・山下敦弘で主演は前田敦子。一時間ちょっとという短い尺だけど、笑える場面も多くて面白かった。東京の大学を卒業しても就職せず、何となく山梨は甲府の実家に帰ってきてしまい、ぐーたら過ごしている23歳の女性が、離婚した父親の再婚騒動などを通して、一年かけてちょっとだけ人生に前向きになるというお話。
正直言って、この映画は前田敦子の存在感に魅力がかかってる物語だと思うのだが、彼女がとてもリアルで良かった。彼女を酷評する評もあるみたいだし、正直自分はアイドルとしての彼女をほとんど知らず、「対して可愛くもないのに生意気なAKBのエース」くらいの認識しかなかったのだけれど、本作はとても良いと思った。そもそも彼女は映画好きで山下敦弘的なゆっくりしたテンポの映像も好きらしいのだが、それを知ってか知らずか、とても良い仕事をしてると思う。例えば、時間軸が後になってしまうが、現代の日本の映画で破竹の勢いで仕事をするあまちゃん系の女優(有村、松岡、広瀬、橋本とかそのあたり)で演じきれない生々しさを醸し出しているように思える。本作の主人公の人付き合いが苦手で、(身近な父親を除いて)目を合わせて会話ができない感じとか、緊張すると早口でまくしたてる感じとか、プライドは高くて同級生の女子の友達には話せないくせに近所の中学生男子を言いように使う感じとか、実にリアルで、クラスの女子一人くらいにいそうな感じで最高なのだ。改めて書くと、彼女は絶世の美人でもないし、本作では大分無防備なタンクトップ姿やだらしないジャージ姿をさらしているが、目を引くようなスタイルの持ち主やナイスバディでもない。山梨が甲府で普通にチャリンコこいで普通にいそうな、「合コンでいたらまぁ当たりかな」くらいの可愛さの女性なのである。前述した女優さんたちでは、恐らく美しすぎて違和感が出てしまうようなところを、前田敦子は人に慣れない感じを話し方、身振り手振りで上手に演じていると思う。同じような印象を「紙の月」の大島優子にも受けたのだが、「どこにでもいそうな可愛い娘さん」役はAKB系女優の得意分野じゃないかなと思う。彼女たち自身がどう思うかはわからんけど。