「不道徳教育」を読む。

不道徳教育

不道徳教育

Wブロック作、橘玲訳。著者はリアタリアニズム原理主義的な考えでもって、社会に存在する不道徳で嫌われる人物(ヤク中、ポン引き、ヤクの売人、ダフ屋なんて職業的な人々をはじめ、環境破壊者や「映画館の中で『火事だ!』と叫ぶ人」などピンポイントな状況まで様々)に焦点を当て、他人を傷つけたりせず、自分の意志で自由を行使するためならその不名誉な立場に陥れることを厭わないヒーローなんだと論じる一冊。ただ、彼らも将来的に法整備や道徳観がリバタリアンな世界に移行すれば、ヒーローではなくなるという主張も面白かった。学術的な硬い文体でなく、アジテーションする感じでテンション高く読めるのも良い。翻訳もその砕けた感じを上手く表しているんだと思うけど意訳感が強く、原文が書かれた70年代のアメリカの状況を踏まえてニュアンスを壊さずに現代的な日本語に訳している感じ。あと、訳者による「本書それ自体の「著作権」を捨てていない(本書は通常の流通経路で売られており、本を買ったからと言って購買者に内容の改編やコピーが認めらているわけではない)」のは原理的リバタリアンである著者の考えからすると片手落ちなのでは、と欄外で指摘する鋭さも痺れた。