その土曜日、7時58分」を観る。

シドニー・ルメットの遺作らしい。NYを舞台に、短期で強欲な兄と人はいいけど情けない甲斐性なしの弟が金に困り、ふとしたことから思いついた犯罪をきっかけに奈落の底に堕ちていく家族を描いた物語。
手法的には特に真新しいものはなく、時間軸をバラバラにする見せ方も割と普通だし、お話自体も大好きな映画「バーバー」に近いんだけど、本作は非常に乾いたハードボイルドな演出で重厚かつスタイリッシュに魅せてくれる。やはり主演二人はじめとする演者が上手い。イーサン・ホークはイケメンだけど態度や話し方一つ一つが情けなく、兄に頼りきりのヘタレを見事に演じてるし、何よりもフィリップ・シーモア・ホフマンが本領発揮というか、「あー、仕事は出来るんだろうけどこういう人とお近づきになりたくないなぁ」って感じの一見紳士的なんだけど強引でヤク中で狂気に満ちた兄を見事に演じていて素晴らしい。キレて淡々と家のインテリアを破壊したり、躊躇なくヤクの売人を撃ち殺す姿とか圧巻。これ見ると彼を亡くしたのはホントに惜しいなぁと感じる。
あと、「バーバー」と比べると、クライムムービーだけでなく、家族の中で孤立した兄と溺愛された弟という家族の関係性とその変化(というか崩壊)なんかも物語に織り込まれていてより楽しめる。後味は非常に悪いけど、重厚な余韻のようで良かった。