「スパイシーカフェガール」を読む。

作品も著者も全く知らなかったけど、マンガ図書館にて読んだ。amazonの評価もかなり良いし、実際すごく面白かった。和食の道を外れた気弱で真面目な青年がひょんなことから飛び込んだタイ料理屋を舞台に、一癖ある人々の織りなす珍道中、的な感じだろうか。
作品をおおざっぱに分類すると、真鍋昌平の「スマグラー」と料理マンガの融合という感じ。絵がとても特徴的で、下手ではないんだけどキャラの顔の作りに関するデッサンやアクションの書き方がちょっと日本のマンガ的なデフォルトと外れてて、その異様な感じちょっとバンドデシネ的で心地よい。
よくある料理マンガの、「1話か2話完結で、ある悩みを抱えたお客さんに対して料理でソリューションを提供する料理屋」的なフォーマットをのっとりながらもそれには合致せず、出てくる人たちが非常にイリーガルで国際的な犯罪組織が出てくる現代的な作り。本書に出てくる店主は銃火器になれた怪しい強面の日本人で、何か国語も話せるセクシー美女がウェイトレスだったりととてもカオスだけど、下北とか高円寺あたりならいそうな感じもするようなリアルさ。かといってシビアで救いのない暴力的な物語というわけではなく、タイ料理をはじめとするスパイシーで美味そうな料理が物語のキーポイントとして作用し、なんとなくハッピーエンドになるという「美味しい」構造になっている。一巻完結でさくっと読めて「あー、このキャラたちの後日譚読みてえ!」的な爽快感も味わえる、お勧めの短編。