トゥルーマン・ショー

トゥルーマン・ショー [DVD]

トゥルーマン・ショー [DVD]

ずっと前ニコニコ動画で見ようとしたら調子が悪くて見れなかったのだが、今回ちゃんと見てみる。
やっぱり面白い。
前情報あって見ないで公開当時に見たら、物語がトゥルーマンからクリストフや視聴者の視点に移り変わっていく鮮やかさに感動したかもしれない。
本作では示されないけど、トゥルーマンは管理社会を抜け出した後どうなるのかってのは気になるところだ。確かにマトリックスのネオみたく仮想社会を抜け出したはいいけど、本作では大きな意味で出口はない。「本当の生を勝ち取るための戦い」は起こりようもない。また次の平坦な日常が待ち受けてるだけだ。まあ彼の場合は世界的な知名度があるみたいなので次の社会への着地点はある程度保障されてるかもしれないが、殻を抜けた人間には何ができるだろうか?「本当の自分探し」の末「ここじゃないどこか」を偶然探し出せてしまった人はパラノイアと認定されてしまうわけだが(本作のジム・キャリーもそう諭される)、俺は自分が知覚できる範囲の世界にしか興味はない。森達也じゃないけど、「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」と思って自分の生きてる現場を丁寧に味わっていく生き方がしたい。
そういった意味で、視聴者たちがトゥルーマンが出口に向かったときに挙げた歓声は限りなくうそ臭い。ひとまず彼らはトゥルーマンの日常をエンターテイメントとして見るより番組を終焉していく彼にエンターテイメントを見てしまった時点で製作側は負けてしまってるわけだが、仮想現実を抜け出した彼を拍手を持って迎えるだけの正当性がある社会の住民ではないのだ。
彼ら自身、どこかでカメラが捉えているかもしれないという疑惑から逃れることができない。世界を正当化させ得る担保はどこにもない。しかし、疑いきって生きることこそナンセンスでもある。これは、もちろん私たち自身に言える事で、トゥルーマンがカゼニモマケズ船を進めて世界の果てを目指す姿に共感する反面、そこにある違和感を持って見るのがいいのかもしれない。

まあ深く考えないでも、小ネタが豊富なので随所で笑わせる名作だ。CMの入り方とかちょっと怖いが(いかに現代社会が広告で行動を管理されてるかみたいな)笑えるし、車で脱出しようとしたら一斉に渋滞になって逃げられないシーンとか爆笑した。とにかく見て損はない映画だ。