前から見たかったクローネンバーグの「ビデオドローム」を見る。

何かジャンルに分けづらい作品だけど、ホラーの棚に置かれるのだろうか。
結構面白い素材を扱ってはいるんだけど、実際のところビデオドロームが何なのか良く分からなかった。現実と虚構の融合とかいうと陳腐な響きだけど、80年代初頭のサイバーパンクが流行るくらいのころってこういうテーマに対する人々の感度が違ったのだろうか。テレビ批判のようにも読めるけど結局なぜ主人公が被験者に選ばれてビデオドロームを体験したのか、それを製作したバリーや博士やその娘の意図が何だったのか、とかほとんど分からずに終わってしまった。
結局主人公もほかの被験者と同じように錯乱して自殺しちゃうってだけなのか?
自分や関係者を殺すことが何の解決になってるのかよく分からんよー。

ビジュアルイメージはやはりこの時代にしては面白いと思う。リングの貞子を先取りしてるかのような「見ると感染(?)する生きたテープ」とか「画面の奥に出入りする」感じとか。腹という身体の領域にテープという異物を入れるビジュアルは、攻殻マトリックスが首からプラグを繋ぐ感じのアナログな表現のように思えた。やはり見る時代によってこういう演出の技術は確実に積み重なっていって、耐久がついてしまうかもしれない。それこそマトリックスの静止したままカメラが縦横無尽に動くようなちょっと前まで「斬新な」表現も20年たてば劣化したように写るのかも。