昨日、「1984」を見た。

1984 [VHS]

1984 [VHS]

いつかは見たいと思ってた映画。思ったより地味な作りで驚き。
劇的なアクションもないし殆どBGMもないし、終盤までは割と淡々と進んでいく。それに、原作を読んでないんだけどどうも原作の情報量をかなり犠牲にしてるんじゃないかと思う。世界観がちょっと分かり辛い。主人公がどんな階級に属していて、他にはどんな階級があってどんな生活をしている人たちがいるのか。なぜ戦争が始まって、今どんな戦況なのか。やっぱその辺を記述するには小説みたいな形式の方がいいんだろーなーと見ながら思ったり。

大抵ディストピアものというと全体主義体制の矛盾に気づいた主人公がどうにかしてその権力と対峙する・もしくは抜け出すというのがセオリーで、本作もそうなんだろうけど、やはりフーコーに関する読書のあとだと、もう少し丁寧に権力の在り方を追いたくなる。
まず、基本的な点として「なぜ」主人公だけが気づくに至ったのかというところを物語に組み込んでほしい。一応歴史を改ざんする仕事をしている内にその矛盾に気づくという内容だけど、全体主義的な体制ががっちり確立されて国民のほとんどが公務員みたいな状態だと、主人公以外にもたくさんの人が気づいてもいいとは思うし、何より「今の社会って何かおかしいんじゃねーの?」と思える余地が残ってるというのは結構重要だと思うので。まあ密かに粛清されてる人もいたけど、そこまで露骨に暴力による統治が行われると、昔のソ連みたいにその社会の成員は表向きは従順にするしかなくても、国家権力に対しては反感を持つ人が増えると思うし。敵国の捕虜は国民のガス抜きというか見世物として処刑を行ってるみたいだけど、一緒に働いていた同僚が急に消えたりする環境じゃ落ち着いて働けないだろう。
やはり、現代の権力の在り方は、「誰か」が巨大な権力をふるうのではなく、皆が皆のために、とても合理的な理由から監視や教育を行うんだと思うし、そういう点で見ると少し前時代的な物語かなという気もする。戦争を行うというのは国を一つにまとめるために必要であって、その状態を継続することが大事なのだというメッセージは、「反・なになに」という形でしか個人も組織もアイデンティティを確立することが出来ない今も変わんないだろうと思ったけど。