ラース・フォン・トリアーの「EUROPA」を見る。

どうでもいいけど、ちょっと前に「2010年宇宙の旅」を見た影響からか、「EUROPA」をエウロパと読んでしまうな。
本作は、いつの間にか好きな監督の一人になったラース・フォン・トリアーの初期の作品。第二次世界大戦直後のドイツが舞台となり、基本はモノクロの中に時折カラーの映像を挟み込む面白い演出で、故郷に舞い戻ってきたドイツ系アメリカ人の主人公とパルチザン組織「人狼」に属する妻との悲喜こもごもを描いた作品、と言うところ。
物語自体は突飛な構成をしているわけではないけど、やっぱり関心を持って映画に引き込まれるのは演出力なんだろうな。基本は夜の暗いシーンが中心で、舞い散る雪や雨の中で吐く白い吐息が印象的な寒々しいヨーロッパの景色が舞台で、主人公の勤務する列車の車両や、置かれた調度品・ファッションへも細部までこだわっているようで美しい。主人公が妻の実家に呼び出されて天井から吊ったカメラで各部屋を練り歩く主人公を上から追っていくショットとかは面白い構図で目を引くし、中でも美しかったのは鉄道模型の上に横になった主人公と妻のキスシーン。スパイダーマンの「逆さまキス」に通じるいいシーンだと思う。
ほとんどがセットでの撮影とのことだが、こういう自分で完全なコントロールの効く箱庭でクリエーション出来るって面白いよなーと思う。ぱっと見た感じはあまり後の監督自身の作風とは共通のメソッドが見られないけど、映画作りの精神は変わらないんだろうなと感じさせる。あ、でも妻のお父さんが死ぬ時の痛々しい映像とかは後につながる要素かも。
今後も新作が出たら楽しみな監督。