狂四郎2030」を読む。

狂四郎2030 1 (ジャンプコミックスデラックス)

狂四郎2030 1 (ジャンプコミックスデラックス)

前にも途中まで読んでたけど、面白くてページを繰る手が止まらない漫画。
第三次世界大戦後(これがアメリカと中国の焦土戦争っていうのが今っぽい)、極度の全体主義、管理主義社会で男女隔離政策や優生学に基づいてデザインヒューマン(性処理だったり農耕用だったり目的別の人間)が生み出されるディストピアとなった日本で、インターネットを通じて知り合った男女が困難を乗り越えて出会い、結ばれるまでの物語。

主人公は遺伝子的に劣ったとされ(あくまで政策的に利用されただけだが)、いわれのない差別と偏見に苦しむが、隔離された教育施設で類まれな戦闘技術を身につけた男と、権力者に嬲られ続けながら、身に付けITの技術で仕事をし、必死に生きる女。
「ターちゃん」に通じる下ネタも多くてそれがうまい具合にハードな描写を中和し、とても完成度の高い作品になっている。(終盤はちょっと急ぎ足すぎた印象があるけど)

全編通して面白いんだけど、民主主義を実践する場として描かれた「アルカディア」の描写が面白かった。
全ての組織は腐敗する、という社会の限界を抉り出していて嫌な気分になるけど、それでも人間は社会の中で生きていかなければならない。ルールを決め、領土と人を守り、助け合いながら生きていかなければならない。
民主主義は衆愚政治なのかもしれない。衆議院選挙の結果に大きく失望した今、リアルな焦燥が広がる。
他人任せで思考停止し、堕落した人間。焚きつけられれば怒りや欲望をむき出しにし、自分だけは甘い汁にありつこうとと必死で、戦争に向けた準備が着々と進んでいる現在。
想像力が足りない。もちろん、他人事ではなく、自分への自戒を込めて。
「自分の幸せ願うことはわがままではない。でも、自分の代わりに誰かが泣いているかもしれない。」宇多田ヒカルも歌ってたし。
自分の愛する人と、助け合いながら、高め合いながら、生きていきたい。考えることを怠ることなく。