坂口恭平「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」を読む。

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

水道橋博士周辺の人たちがよく話題にしてる印象があって読んでみた。うん、面白い。都市には金や住所なんてなくても実際に生きていける空間があるもんだと感心。ゼロ円生活を実践する先人たちの生活の記録を丁寧に追った一冊。

もちろん、本書に取り上げられる人々を持ち上げすぎているところはあると思う。金がなくても生きていけるのは確かだが、ある生活よりも幸せだとは誰もが思うわけではないだろう。いかに便利とはいえ、カセットコンロで焚いた水で半身浴をするより毎日足を伸ばしてお風呂に入りたい人もいるだろうし、公園の炊き出しやスーパーの余り物だけじゃなくて高級なステーキや寿司を食べたくなる時だってあると思う。
そして何より、これらの生活では「人はパンのみにて生くるにあらず」の通り、文化や芸術やスポーツを楽しむ隙間がないのだ。海の幸、山の幸ならぬ「都市の幸」によって都市に成る色んなモノを採集して暮らすのは頭を使うし、「生きる」ための力を取り戻していくような経験であるかもしれない。しかし、嫌々サラリーマンとしてペコペコ頭を下げて残業してお金を稼ぐような生活でも、余暇でエネルギーを注ぐ人だっているのだ(俺も似たようなもんだし)。
そして、人は誰かに承認して欲しい生き物でもある。家族に認められたいし、自分が属する組織で認められたいし、有名になりたい、ビッグになりたい気持ちだって人間の大切な一面だと思うが、ちょっと本書ではそういう人間の基本的な性質をおろそかにしちゃってる感じがする。本書に描かれるロビンソン・クルーソーのような先人たちに薄い感情なのだろうが。

「都市型」とはちょっと違うが、ちょうど以下の動画を見たばっかりなので貼っておく。こういう生活は刺激的で面白そうだと思うが、今のところ実践してみたいとまでは思わない。もっと厭世的になったら試してみるかもしれないが。だってクラブ行ったりレコード買ったりラーメン食べたり本読んだり映画見たりしたいし。ただ、いざとなればどこでも生きていけるんだっていう認識は強くもてた。

無人島で孤独に暮らす全裸の男 - In Subtropical Solitude - YouTube