清野栄一「テクノフォビア」を読む。

テクノフォビア

テクノフォビア

ele-kingで知ったけど、ちょっと期待はずれな出来。なんというか、プログラミングとかSI屋の仕事を知らない人が読めばそこそこ専門知識が散りばめてあってミステリアスに見えるかもしれないけど、ちょっと浅いというか、ストーリー上で重要な道具として使うには理解が浅すぎる気がする。「バックドア」とか「コンパイル」とか「マイニング」みたいな単語をひけらかして、煙にまいてるような気がする。俺みたいな半人前SEでもそのくらいは一応調べなくても意味はわかるけど、何かプログラミングができるという能力をすごく特別視してるんだよなぁ。2005年に出た作品だしそれほど古くもないけど、何か聞きかじった業界の知識をベースにストーリーを展開している気がして、薄っぺらく読める。例えば、本書で一応適役のようにして描かれる、主人公と別の企業に勤めて、今で言うビッグデータから個人情報を抽出して全て監視する「バベル」とかいうシステムの構築をしようとしている人間がいるんだけど、主人公を無理やりそのプロジェクトに引き抜こうとして脅しをかけたり、女の名を語ってメールを送ったりとかするんだけど、俺が知ってるSI業界じゃこんなダーティな仕事しないんだけど…。仕事は仕事でしょ。こんな無理やり敵っぽく物語に配置させるには状況が平和すぎるというか、こんなハイリスクローリターンなことしないと思う。そういう不自然さがいろんなところに滲み出てるんだよな。
後、気になったのは情景描写は普通にするのに、人物の見かけについての描写が極端に少なくて、例えば主人公でもどんな外見をしているのか作中で全く描かれないので読者の頭の中で再現しにくいこと。
他には、登場人物たちが異様にSF的な物語に詳しかったり、文系の基礎教養を身につけてるという不自然さ。実際、SI業界の人間はほとんど仕事離れたら野球・サッカー見るかマラソンする位の人しかいないよ。サブカル臭い人なんてひとにぎり。