けいおん!」映画版を観る。

映画 けいおん!  (Blu-ray 初回限定版)

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面白かった。元々けいおんの原作は見ていないし、アニメも手付かずで、主要キャラの名前もよく知らんかった。そういう状態でこの映画を観る人ってあまりいないんじゃないかと思うが、特に予備知識なくても十分楽しめた。山田尚子監督の可愛さだけで興味もって観たんだが、すごく繊細な青春映画だと思う。映画「リンダリンダリンダ」的な、透明感のある日常風景と多感な女の子達の感情の機微が描かれており、自分の高校時代をつい思い返してしまう。軽音部の面々が、卒業旅行にロンドンに行ってすったもんだしたり、後輩のあずにゃんのために曲を送ったり、卒業ライブを敢行したりするお話。
山田尚子監督が、「作品の一番のファンになろう」と謳っていたのがよくわかる、キャラごとの丁寧な立ち振る舞いの描き方がすごく良い。個人的にすごくハッとしたのは唯が妹の憂と話してる時にみかんを手でくるくる回してるところ。すごく可愛い。こういう振る舞いってもちろん他の主要キャラはしないし、唯という人間の描写としてすごく的確なんだと思う。こういう小さな描写がいちいち素晴らしくて、キャラへの愛が伝わるのだ。萌えアニメ的な演出が薄いというか、ヲタ向けっぽくない感じ。むしろおしゃれサブカル的な空気感かもしれない。ロンドンでホテルに行こうとしたら迷ってほかのホテルに行っちゃったり、現地の寿司屋で突発で演奏してみたり、すごくリアルな高校生の旅っぽくて共感できる。全体的に、卒業というか終わりに近づいていくような胸を締め付けるような高揚感があって、それが切ない。卒業式の日の少しひんやりした透き通るような空気や匂いがそのままダイレクトに伝わってくるような演出と、ラストの屋上で四人が円陣組んで話す場面。今この時間しかない、それでいてすごくお互いの強い繋がりを感じられる幸せなかけがえのない瞬間が描かれていて、ある意味スラムダンクの無音のラストシーンに近い一体感がある。誰しも体験できるつながりじゃない。そこの領域ってすごく憧れる。そういう空気を真空パックにして描けた山田尚子監督万歳。ファンになりました。