刑務所の中」観る。

刑務所の中 特別版 [DVD]

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良かった。何より、原作の雰囲気を忠実に再現したようなゆっくりした時間が好き。銃刀法違反で逮捕された作者のエッセイ風漫画の映画版。堀の中の食事や生活を緻密に記録し、穏やかで繊細な作者の心境を楽しめる。都築恭平の「刑務所良品」にもあったけど、法を犯して堀の中で生活する人間にも日常があるし、その中に社会もある。普段接する機会が少ないけど、そこには自分と変わらない精神が生きているということを確かめられるのだ。崔洋一監督は「血と骨」みたいな結構骨っぽいゴツゴツした描写を得意としてるような印象があったけど、こんな穏やかな作品も撮っているんだなぁと確認した。

本作での見所は、仲間たちと堀の外に出たら会う約束をして、それバレて懲罰房に行った時のシーン。悪いことをしてムショに入り、その中でもルール違反をおかしたのに、懲罰房が一番居心地がいいという矛盾。確かに身体的な自由はないが、決められた単純作業のみをこなせれば、誰かと話す気兼ねもなく、新聞も読めて自由に思考することもできるのだ。最近出所したホリエモンとか監獄ラッパーことビッグ・ジョーもそうだったけど、一番読書に向いた環境はムショだと思う。そしてそう言った意味だと、学者さんはムショで仕事するとはかどるんじゃないかとか思う。カントの生活はホントに単調だったらしく、お決まりのコースを一分の違いもなく散歩していたらしいし、ムショの生活とあんま変わらない気がする。
本作は、そういった作者の思考・精神が冴えている、充実している状態ということが伝わってくるのが魅力だったし、それを映像にも起こせている感じがすごく良かった。
あと、チョイ役で窪塚洋介が出てくるんだけど、いつものぬぼーっとした喋りで、何の罪で入ったのかなーと気になった。