蒲田行進曲」を観る。

あの頃映画 「蒲田行進曲」 [DVD]

あの頃映画 「蒲田行進曲」 [DVD]

園子温地獄でなぜ悪い」について、本作のオマージュであるという評価をどっかで見てからいつか観たいなーと思っていた一本。面白かった。時代遅れの二枚目気取り大根役者と、彼を慕う殺陣の切られ役専門の売れない役者とその妻を中心とした映画製作に携わる人間たちの悲喜こもごもを描いた作品。つかこうへい原作を深作欣二監督が撮った1982年作。
確かに、「地獄でなぜ悪い」は本作に通じる部分があるなーと思えた。とにかく密度が濃く、終始ハイテンションで観ていてリズミカルで面白い。恋も友情も成長も詰め込んでおり、役者たちの過剰なエネルギーによる過剰なおしゃべりと過剰な演技。そして「映画製作を描く」というメタ構造になっている点も同じだ。印象に残ったシーンは、怒りにかられた売れない役者が妻の反対を押し切って決めた映画出演をたしなめられて、自分の家の中を壊して回るシーン。ホント気持ちいい位部屋の中を軒並みぶち壊していくシーンはコントのようで面白い。
ただ、本作で重要なラストシーンが残念だった。生きるか死ぬか、緊張のの見せ場を1台のカメラで何の臨場感もなく俯瞰で撮ってしまったこと。このシーンの前に、わざわざ映画内の監督が色んな角度から撮るように指示しているシーンがあるのだから、いくつかの角度から撮んなきゃダメだと思う。そして、このシーンに至るまでに、売れない役者は「役作りする時間を下さい」と言って部屋に閉じこもる時間があるのに、実際のラストシーンでその布石が何もないこと。せっかく時間稼ぎしたのなら、観客の度肝を抜くようなビックリすることしてほしかったなぁというのが正直なところ。だから、すごいシーンには違いないんだけど、ちょっと拍子抜けしてしまった。演者がカメラに向かって手を振るエンディングも含め、映画を撮るってこういうことなんだ、という映画愛にあふれていていい作品だと思うけどね。