「競売ナンバー49の叫び」を読む。

競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫)

競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫)

ピンチョンの諸作の中では、そんなに長くないし主人公が固定ということもありかなり読み易い部類らしい。でも、十分に難解。莫大な遺産を残して死んだかつての愛人から遺言管理執行人に指名される28歳の女性(同い年だし、なんと作者ピンチョン自身もこの年でこの物語を書いたらしい)が出会う、ドラッグや陰謀論、暗号、劇中劇などに立ち現れる摩訶不思議なアメリカの姿を描く。
落とし穴に落ちたらその階層でもまた落とし穴があり…、みたいに物語がどの方向に進んでいくのかまったく見当つかないし、主人公エディパが触れるもの、出会う人、核心に迫るようで何も明らかにならない謎など、エディパと一緒に謎の都市サン・ナルシソで迷子になってしまうような感覚を味わう。解説を読んでわかることも多く、人物の名前から数字から何かにつけて裏の意味や特定の人に向けたメッセージがあったり、とっちらかったパズルのピースだけ与えられたような感じを受ける。全然筋は違うのだけれど、同じくアメリカの西海岸が舞台のリンチの「マルホランド・ドライブ」を観た時の印象に近いものがある。恐らく、本作も2度、3度読み返せば少し整理が出来るのかもしれないが、一週目だとかなりきつい。この分だと重力の虹は読める気がしない…。