ジャージー・ボーイズ」を観る。

クリント・イーストウッド作。面白いは面白いけど、傑作とまでは言いづらいかなー。原作ものだし、フォーシーズンズ(恥ずかしながら観るまで実在のバンドだと知らなかった。でも、曲はいろんな人にカバーされて確かに知ってるという)という実際のバンドについて描いたこともあって安定感はあるけど、その分期待以上の面白さがないというか。「グラン・トリノ」の方が好きだな。ニュージャージーを舞台に、希代のファルセットシンガーであるフランキー・ヴァリを中心に劣悪な環境からバンドが抜け出し、成り上がり、借金して仲違いして落ちぶれた後、再結成するまでを描く。
主役のフランキー・ヴァリ役の役者さんが素晴らしい。ホントに歌ってるし、ホントにうまいし、イタリア系で小柄だという本人の特徴にかなり合致しており、多分往年のファンもイメージしやすいんじゃなかろうか。他のメンバーも(知らないけど)多分忠実に再現してるんだろうなーと思わせる。音楽の扱いもうまくて、例えば彼らのヒット曲に「sherry」という曲があって、それが世に広まるまでを描くまでが鮮やかで面白い。胡散臭いオカマ(ボブ・クレーという著名なプロデューサー)によるレコーディング風景から、次のカットからはラジオ局でDJが警察に取り囲まれてるシーンに切り替わる。何事かと思いきや、DJが「この曲は最高すぎるぜ!俺は何と言われようとこの曲をずっとかけ続けてやる!」みたいなこと言っててラジオをジャックしているという。いいシーンだ。誰もが一度は聞いたことあるだろう「CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU」にしても、曲に対するケチをつけたヴァリに対して、すぐ直すよと言った作曲のボブのシーンの次のカットはオーケストラをバックに歌ってるシーンとなっていて、映画的な、映像的な盛り上げ方をすごく効果的に使っていると思う。観客の感情のコントロールが旨いというか、往年のファンは涙ものなのだろう。
というように、見どころはたくさんあって人にも勧めやすいが、決して心に爪跡を残すような作品にはなりそうにない。