グレッグ・イーガンプランク・ダイブ」を読む。

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)

いやー、評判通り面白いけど難しいなぁ。初のグレッグ・イーガン体験。短編集で、個人的には進むにつ入れてどんどん難しくなっていく感じがあった。そういう意味で、序盤の「クリスタルの夜」(個人的にはわかりやすさと面白さがベストだった)や「エキストラ」や「暗黒整数」辺りまでは理解しやすくてしかも目から鱗的なSF的な楽しみもあり満足していたんだけど、後半「ワンの絨毯」や「プランク・ダイブ」辺りはまさにハードSFというか、きちんと物理学を学んでないと相当読むのがつらい。相対性理論をきちんと理解しておくのは基本として、事象の地平線とかフーリエ変換とか量子理論とかヒッグス粒子とかナノマシンとか難解な単語が何の注釈もなく会話で使われ、「なんかよくわからないけどすごい!」みたいな状態になってしまう。いや、どちらの作品も面白いんだけどね。そういうガジェットに頼らずとも、最終的には物語として未知の物理に挑戦する人類とか、持ち帰ることができない研究成果に対する葛藤とか(プランク・ダイブはブラックホールに飛び込むこと、要するに片道切符)を描いていて読み応えは十分。あと、プランク・ダイブ中の5次元空間の描写とかはやっぱ映画「インターステラー」を想起させた。
しかしグレッグ・イーガンの博学ぶりはすごいな。ネットとかコンピュータ科学に強いサイバーパンク作家なんだろうというイメージだったけど、現代物理学や数学をかなり広域にカバーしおり(と素人目には読める)、しかもホメロスボードレールを引いて見せるのだ。