「常識としての保守主義」を読む。

「常識」としての保守主義 (新潮新書)

「常識」としての保守主義 (新潮新書)

著者の櫻田淳氏は「正論」というタイトルで書かれる政治に関する記事を以前から読んでいて興味あったんだけど、今回初めて単著を読んでみた。中盤の代表的な保守主義の影響の強い政治家を紹介していくくだりはちょっと具体的過ぎて退屈に感じる部分もあったけど、概ね楽しめた。古今東西政治書に通じた博学な氏の拡張高い気品のある文章を堪能でき、文学的にも楽しめる。内容はタイトル通り、政治学における保守主義ってなんぞや?みたいなことを過去の研究や実践した政治家の紹介で持って定義づけるもの。週刊新潮での連載をまとめたものらしく、全編通じて何度か同じような内容を繰り返す部分があるためちょっと冗長に感じる部分もあるが、ここ大切なところだから!と言われてるみたいで気が引き締まる。特に、少数の天才が全体主義的に構築する全く新しい理想社会を創出しようなどという観念論になってはいけない、人間はもともと不確かな生き物で、出来ることには限界があるのだ、過去の経験や知恵を重視しなさいというフレーズは通奏低音のように本書に流れている。そして、反共的と結びつけられがち(実際俺もそういうイメージあった)な保守主義は多様性を保証することが前提であり、一つの考え方に固執してはならないのだというようなことも繰り返されており、政治学だけに収まらず、まさにタイトル通り「常識としての」人のあり方というかダンディズムを学んでいるような気分になる。
ただ、近年のジャパンクールを評価してるあたりは感性の古いおっちゃんだなぁと思ってしまった。あんなの全然クールじゃないでしょ。