KAGEROU」を読む。

KAGEROU

KAGEROU

「バーナード譲曰く。」を読んで早速読んでみた。確かに思ってたよりは面白かった。それなりに臓器移植や心臓病など医療に関して専門的な用語も出てくるが、少なくとも門外漢からしたらそれほど無理のある書き方はされてないと思うし、情景描写も平凡な感じは否めないがそこそこリアリティはある。話の筋も何も考えずに一気に書ききった感じではなく、組み立てを相当計算して推敲した感じがみられるし、随所に伏線があってそれをきちんと回収してある。本書自体の特定のページのみ、ページ数表記が手書きになっている(その理由は本書の内容で明かされる)なんていうメタな小ネタも盛り込んであり、ブレインやゴーストライターの存在を疑われるのも分かるくらいエンターテイメント性もある。現代日本が舞台だし、映像化も容易に出来そうな点もポイント高い。ただ、やはり傑作というにはちょっと内容があっさりし過ぎているし、「バーナード譲曰く。」の神林の言う通り、やや不自然な直喩表現など気になる点もある。あと、他の人のレビューで指摘していて共感したのが、キャラの名前が皆カタカナで、それが文章自体の軽薄さを出してしまっているというもの。主人公の「人生に絶望した40男」も非常に軽薄な話し方なのでもっと重みを出した方がいいんじゃないかなぁなんて思ったり。
それでも、比較に挙げるのも本作に失礼かもしれないが「リアル鬼ごっこ」みたいな日本語の崩壊や稚拙すぎる表現は見られないし、「命」の大切さというストレートなテーマも小中学生なら読んで楽しめるんじゃなかろうかと思う。