「そこまでやるか!裏社会ビジネス」を読む。

最近で言えばクレイジージャーニーでおなじみの丸山ゴンザレス、丸山佑介氏の昨年の著作。広くアンダーグラウンド社会のジャーナリスト、フリーライターとして活動しており、本書では主に日本の第二次世界大戦後以降のやくざや半グレなどのシノギがどんな形態で成り立っているかを述べた一冊。
前作でとりあげた高野政所も獄中で著作を読んでいてレコメンドしていたのだが、かなり期待外れ。あえて言うなら、本書にも参照されるが「闇金ウシジマくん」を読んで、「日本にもこんな世界があるのかとびっくりしたり、自分と無関係と思える」くらいにおめでたい日本在住の人なら響くかもしれないけど、そうでもない人にはある程度常識の範囲を出ない、生温い仕上がりになっている。
そして、ですます調すら統一できないあやふやな文体や、身近な人の伝聞や実体験を基にした精度の低い文章が続く。恐らく、彼自身に統計学社会学の素養が全くないのだろう(本作中でも、そういう人が自分の業界にいないことを嘆いていたりする)が、そのせいで薄っぺらな著書に仕上がっている。本書の中で「権力」について解説するくだりがあるが、恐らくギデンズやニーチェの「力」についての著作も読んだことがないと思われる。別に教養主義になる気はないのだけれど、思考不足の観が如実に出て辛い。要するに、本書は印象論と体験論の外を出ない。客観的なデータや白書など、参照文献も一冊もない。それだけで、本書の質は窺い知れるだろう。クレイジージャーニーでもその取材姿勢に疑問を感じることは多かったけど、本作を読んで確信してしまった残念な例。