海よりもまだ深く」を観る。

久々の新文芸坐にて。平日日中ってほんと老人しかいないなーと思いつつ観た。となりの爺さんとかいびきかいて寝てるし。
是枝監督作品としてはかなりコメディタッチかも。イケメンなのに親や姉のすねかじりでギャンブル好きでダメな大人ではあるんだけど、そこそこ愛嬌があって社交性もあってお節介で愛らしい中年男子を阿部寛が演じる。しっかりしてるようで若干押しつけがましい母親に樹木希林(自分の母親象とキャラ造形があまりに似すぎていて困るほど)、母と同じくしっかり者の姉に小林聡美、しっかり者の元妻真木よう子、妙に冷静で冷めた職場の後輩で突っ込み役に池松壮亮、いつも通り飄々とした癖のある探偵事務所長にリリーフランキー、探偵事務所の紅一点でエッチな雰囲気濃厚な中村ゆりという色んな魅力的なキャラクター陣が織りなす、なんてことのない日常描写にハナレグミの主題歌や音楽が似合う。
映画を通して大きな出来事は起きないんだけど、キャラクターの細かい演出や挙動が面白くて、特に樹木希林阿部寛の自然なボケ・ツッコミの親子描写は笑える。実際映画館でもかなり笑いが起きてたし。「ファイナルアンサー?」「古いな笑」みたいなやり取り、実際俺もするわ、と思ったり。あと、真木よう子阿部寛のやり取りも最高で、母親がいる狭い団地の一室でセックスしようとして拒否されたり、なんとかお近づきになりたい阿部寛のコミカルな演技が楽しい。とにかく見栄っ張りで、息子に野球用のいいスパイクを買ってやりたくて、探偵業を行う上での顧客の秘密主義的な原則も平気で破ってしまうダメな人間。亡くなった父の形見で何か金目のものはないかと質に売りさばこうとする姿。でもなぜか愛おしいという。