「プレシャス」を観る。

悪くはないんだけどちょっと消化不良。1987年のNYハーレムを舞台に、わずか16歳であり得る不幸を立て続けに受け続けたような少女が読み書きもできないままフリースクールに通い始めて、教師や生徒たちとの交流の中で生きる希望を見出していくまでのドラマ。
フィクションということが分かるとちょっと盛りすぎじゃない?という感じ。似たような強烈人生譚として挙げると、卯月妙子のマンガが面白いのってやはり実話をベースにしているからというのが大きいと思うけど、ちょっと本作はなぁ。もしかしたら当時のNYに同じような境遇の少女が沢山いて最大公約数的なお話ということかもしれんけど、最後のHIV陽性反応だったってエピソードとか要るかな?そして、作劇的にもイケてないところが多数あって、例えば主人公の少女は「得意なことは?」と聞かれて「ダンス」と答えるんだけど、少女の妄想の中以外でダンスを披露する場が無かったり、最初の公立校時代に好きだった男性教師がいるんだけど、退学になってからは一度も登場しなかったり、好きな教科は数学って自己紹介から始まるのに数学を使う場面がなかったり、設定や前フリをうまく活かせてない感じがしてもったいない。
むしろ印象に残ってるのは、無駄に豪華なチョイ役ミュージャン達。最初は出演するなんて調べずに見てて、カウンセラーの先生マライア・キャリーにクリソツだなぁ、でも黒髪だしマライアより大分小柄だなぁなんて思ってたらホントにマライアだったり、やたらセクシーなナースとしてレニークラヴィッツが出てたり。特にマライアは「先生はイタリア系?それとも黒人?」なんて自分の人種的ルーツを少女に問われる場面があったりして何か確信犯的だなぁて思った。劇中では明言しなかったけど、彼女の場合どんな風に回答するだろう。