ルソー「エミール」のまんが版を読む。

この名作をまんがで読破シリーズ、すごいバカにしてたんだけど、文学作品のように原文を「味わう」ようなものでなければ、エッセンスさえ頭に流し込めればいいんじゃね?とこの年になってふと思い、読んでみた。エミールという男の子が生まれてから24歳になるまでの教育方法について小説的な手法で論じた本。原著読んでないけど、面白かった。なにより、教育者なら一度は読んどけ的な教科書として扱われるのも納得な、今読んでも特に倫理や道徳的な面で外れていないところにびっくりした。逆に言えば、王権神授説とか「貴族と平民では流れている血の色が違う」的な18世紀のフランスでルソーが当時問題視していた身分差別に基づく社会の在り方がこの作品以後改善されていったからということなのだと思うが。まぁ、「子供はある年齢に至るまで田舎で育てろ」とか「宗教に関する知識は青年期になってから教えろ」とか、多少俺個人の教育感とは違うかなーと思う点もあるけど、貴族の子に生まれれば乳母の庇護のもとで「自分は平民とは違う」という意識の再教育をされ何不自由なく大人になっていた当時としては画期的だったのだろう。そして、当然のことながら学校制度が始まる前なので学校は登場してこず、主に農耕や工場労働や読書といった方法で学ぶというのもカルチャーギャップで楽しめる。
この作品はまんがで読破シリーズの中でも原著のエッセンスをうまく抽出した良書らしいので、さくっと読むには良いと思う。