大好きが虫はタダシくんの」を読む。

阿部 共実作品を読むのは「ちーちゃん」に続き2作目。本作も可愛らしい(というか浅はかなくらい日常系萌えマンガ的な)絵柄と裏腹に、すり傷にワサビをグリグリ擦り付けるような痛みと哀しみを味わせてくれる。痛さで言うと山本英夫山口貴由に双璧する位なのに、なぜこの絵柄でやることを選んだのか不思議な作家。
本作は短編集という位置づけで、詩的な言い回しに走って興ざめしたり、こっぱずかしくなるくらい青春してるような話とか、普通に美少女二人によるボケとツッコミのギャグものもあるんだけど(そして、そのボケとツッコミという構造自体を嘲笑うような秀作もある)、やはりずっしり痛い作品が興味深い。タイトル作とかはコミュニケーションに難のある人間として読んでると涙出そうになる。「デタジル人間カラメ」とかいうワケのわからん短編も、普通の学園ものマンガみたいな体裁なのに登場人物たちが全てコミュニケーション取れているようで取れていない、マンガのお約束事をぶっ壊すような不気味な作品で面白い。例えが適切か分からないが、統合失調症の患者の文章を読んでいる時と同じ感覚が味わえる、なかなかスリリングなマンガだ。