「職業としての地下アイドル」を読む。

姫乃たま氏の2冊目。100名程とそんなに母数が多くないとは言え、地下アイドルと地下アイドルファンたちから緻密なアンケートを取り、地下アイドルを分析して見せた一冊。現役アイドルが、ポエムめいた自己語りなんかとは違うレベルで自分のいる社会や自分について見つめなおした習作。社会学修士論文みたいな出来栄え。
色んなアンケート結果について著者が感想や裏付けとなるようなエピソードを挟んでいく形で進むのだが、特に面白いと思ったのは「母・父に愛されてきたか」という設問と「学校生活に不満はあるか」という設問が一般の回答と非常に有意な差で違うことから、「地下アイドルは、両親に愛されて生きてきたからこそ、人に愛される喜びを誰より知っていて、それにも関わらず、学校で受けたいじめ体験によって、その喜びを喪失してしまった女の子たちである」という分析。自分のような全くの門外漢でもすごく的を得ているように見えて、将来子供ができた時にその子をアイドル的に可愛がってしまうとその後いじめられたり苦労するのかなぁなんて思ってしまった(アイドルになること自体はどちらでもいいんだけど)。他にも、アイドルとアイドルファン双方の平均年齢や平均月収だったり恋人の有無だったり、答えにくい所も集計して分析しており、2017年のアイドルシーンを論じる上での一次資料としても使えるんじゃないかと思う良仕事。