おやすみプンプン」を読む。

正直言って舐めてた。ツタヤディスカスでマンガ借りる時に、適当に冊数を上限の30冊に合わせるために借りたのに、衝撃を受けてしまった。読んでから一週間位経つけど、まだ感覚がこの作品に乗っ取られている。構成は冗長すぎるし(作者もインタビューで語ってたけど、叔父さんのエピソードに1巻費やすとかやりすぎでしょ)、全編通して気持ち悪いポエミーでナルシスティックな自分語りが続いてかなり不快になり、途中で読むのやめようかなと思ったのも事実で、単純に良作とは言い難い。なのに、その冗長さを全て前フリとして収束する結末は圧巻だった。ネットでは鬱マンガとして有名らしく、比較もされていたが古谷実ヒミズ」に近い。現代の日本で暮らすプンプンという少年の10歳から20歳まで成長する姿を描く。
浅野いにお作品は「ソラニン」と「素晴らしい世界」と「虹ヶ原ホログラフ」を読んでいて、どれも一貫して若者を主人公にしているのもあって、正直30を超えた今の自分には合わないんじゃないかと思いつつ読んだ。すると予想通り思春期の自意識過剰過ぎて直視したくない自分語りが続いてげんなりしていく。でも、読み終わった後からなら、プンプンが徐々に、しかし確実に「普通の生活」から外れて堕ちていっていることに気づく。プンプンは家庭環境が複雑で、ソリの合わない母親と死別したり、酒乱でDV気味の父親とは離婚後一度も会っていない。勉強だけは頑張ろうと思っていい成績で進学校には入るけど、友達関係も異性関係も徐々に上手く行かなくなり、コミュニケーション下手もあって孤独になっていく。コンビニバイトや交通量調査やサンドイッチマンをやってフリーターとして何とか自活することは出来るようになっても鬱屈した毎日は続き、手を差し伸べてくれる人にも素直になれない。そして小学生の頃から大好きだった女の子に偶然再会したことから事件を起こし、地獄への道が始まるという。
この事件後の逃避行生活がすごく切なくて良かった。余りにも行き当たりばったりで破滅的で、2人とも身寄りも友達もいなく相互に依存しあい精神的にも肉体的にも傷つけあい交尾してお互いの存在を確かめ合うという濃厚な生活。そして死という唐突な最後。この最後の場面、あまりにリアルで衝撃的で息が止まりそうになった。鹿児島の田舎の寂しい廃屋で、薄目を開けたままの最愛の人が首をつっているという光景。背景に写真を使いこむ著者の面目躍如というか、本当に自殺を目撃してしまったような感覚に襲われた。この場面を生涯忘れないんじゃないかと思う。この最悪の選択っていくらでも免れたと思うんだけど、2人とも家庭環境に問題があって不器用でバカで自分から最悪の選択肢を選んだしまっていくので、それがまた泣ける。
プンプンも自らの意志で死を選ぼうとするが、自分を大切に思ってくれる友人が現実に引き留めてくれる。こんな人が今自分の近くにいてくれるだろうかと思い返してしまう。
あさひなぐの感動と双璧をなす衝撃だった。