「目の見えないアスリートの身体論 なぜ視覚なしでプレイできるのか」を読む。

twitterで面白いツイートを読んで知った著者の本を読んでみた。タイトル通り、目の見えない一流アスリートたちに、それぞれの競技をどのように取り組んでいるかを著者がインタビューする形でまとめた本。著者自身がインタビューの前段で記す通り、「苦労をしながら懸命に頑張るアスリート」的なお涙頂戴話は全くなく、ひたすら自分の体をどのように使って人工的なルールに制限された世界(スポーツ)の中で高い成果を出すのかという点についての話が展開される。そしてその取り組みというのが今まで自分が想像もしたことのない領域の世界で、一種のSFというか、自分の知覚を揺るがすような、新たな世界の知覚方法を知る様な面白い発言が多くて面白かった。本書で紹介されるブラインドサッカーゴールボールなどやったことのないスポーツだから知らないのではなく、例えば本当にサッカーとブラインドサッカーでは別の競技であって、ブラインドサッカーはサッカーの代理足りえないんだと感心した。音を使ったフェイントとか、晴眼者の世界ではフェイント足りえない技術が発達してたりね。「オフェンスの時はゲームを自分視点でとらえてるけど、ディフェンスの時はコートを上から俯瞰で眺めてるような感覚でプレイしてる」という話なんかなるほどーと思ったり。
また、一歳の頃から全盲で「見える」ということがどんなことが分からない水泳選手の話とかもすごく面白く(木村選手という人なんだが、茶目っ気あって凄く話が面白いのもある)、そもそも見えないこと自体を「宝くじに当たったらいいな、という感覚」と評してるのがまず印象的だった。当たったら(見えたら)嬉しいけど、今まで当たらなくても生きていけてるし、みたいなね。この選手に至っては泳ぎ方を視覚情報として得ることが出来ないので、人のフォームを見様見真似で取り入れて消化するということが出来ない。要するに自分の感覚を基に泳法を自分で編み出しているのだ。そんな中で一番楽なのがバタフライというのがまた意外で面白かった。バタフライはクロールみたいな左右のひねりがなく、前にしか進まないのが楽しいらしい。あと、目が見えないから他の感覚が研ぎ澄まされるとも限らないとか語っていてそういうのも目から鱗の感覚だった。


素晴らしい筋肉…。