Bjork「Vespertine」を聴く。

ちょっと口にするのが恥ずかしい「洋楽」というカテゴリーの音楽に興味を持った思春期の頃、「リアルタイム」で聴いて衝撃を受けたアルバム。知ったのは当時読んでいたファッション誌「SMART」でリボルバーのkiriが紹介していたページだったと思う。音楽を知る機会・情報が今と比べて格段に少なかった中でよくたどり着いたと自分を褒めてあげたい傑作で、今さらだけどLPで購入。当時はまだレンタルしたCDをMDに取りこんで、擦り切れないけど擦り切れるように聴いていた。Bjorkの最新仕事とかは正直それほど追っていないんだけど、本作が個人的に聴いてきた作品の中ではベストであることは揺るぎない。今でもVRとか最新のテクノロジーに興味を持って新しい表現を目指しているみたいだし、制作スピードも速くてこの人のバイタリティには恐れ入る。
「Vespertine」は夕暮れ、というような意味らしい。とにかく内に内に沈みこんでいくような、信仰告白をしているような崇高なアルバム。ハープやオルゴール、流麗なストリングスとグリッチがのったひんやりした電子音が絡むトラックに、Bjorkがささやくような、泣きそうな歌を乗せる。やはりBjorkの声は凄い。この人の声に似ている人を知らないというか、この声が入るとどんな曲でもBjorkになってしまう。音の一つ一つが初めて聴いた時の記憶を呼び起こすというか、当時の感覚を体験できるようなアルバム。
ただ、今回聴いて超残念だったのが、本作のハイライト「generous palmstroke」が日本版ボーナストラックでLPに収録されていなかったということ。ホント、この曲目当てで聴くことも多かったのに…。このBjorkの祈るような歌声にハープの乱れ打ちが絡む荘厳な曲は人生ベスト100に入る超名曲なんだが。アナログでクラブでプレイしてみたかったなぁ。