「幻の近代アイドル史: 明治・大正・昭和の大衆芸能盛衰記」を読む。

出版された当初から何か興味があって読んでみたかった一冊。面白かった。タイトル通り、テレビや一般的になる前の明治・大正・昭和においてアイドル的な人気を誇った女性たちについてまとめた本。アイドル戦国時代と言われている現代ではあるが、時代と共に文化や思考は変わるかと思いきや、人間って全く変わらんのだな、という一言に尽きる内容で、楽しめた。著者は日本近代演劇を研究している人で、きちんと当時の資料を読みこみ研究していることが伺われ、読み物としての質が高い。けど、堅苦しくはなく現在のアイドル用語を多用して説明されるので、めちゃ分かりやすい。
推しのライブ中にファンたちが相の手を入れたり、学生がアイドルにハマって全公演に通って身を持ち崩したり、プレゼントや手紙を送りまくったり、推しを重用しない運営を糾弾したり、新聞の投書欄で推しについて熱く語ってファン同士が交流・敵対してたり、オトナな人達にアイドルもドルヲタもバカにされてたり、人が人を好きになって行うことは全く変わっていない。アイドルもまた、病んでイケメンと心中してしまったり、一瞬成功したものの晩年が不遇だったり、自分のキャラやセクシーボディを売りにして上手く成功したりと現在と全く変わらない。読んでて怖いと思ったのが、プライバシーの概念がない当時、ガチオタたちが推しを当たり前のようにストーカーして家まで行ったり、ゴシップ誌が実名でセックススキャンダルを書いたりしてるとことか。特に、伊藤博文がさすがというか、本書に出てくるアイドル達ほとんどとの関係をすっぱ抜かれており、女好きぶりは知っていたけどハンパない人だなぁと苦笑せざるを得ない。
表紙の笑顔が素敵な女性は明日待子さんという方で、戦前の兵士たちにとってのアイドルだったそう。ムーランルージュ新宿座というところで女優をしていたという。