「私はあなたの二グロではない」を観る。

硬派なドキュメンタリーだが、アメリカを知る資料として楽しめた。アメリカの作家ジェームズ・ボールドウィンのインタビューを基に、現代に至るアメリカでの人種差別について考察する。20世紀の現代において、黒人が描かれる物語や運動が欧米やアメリカにおいてどのように扱われていたかを問い直す内容。恐らく資料的にも貴重そうな昔の黒人映画の映像や、生前のキング牧師マルコムXのインタビューに留まらず、KKKによるリンチを受けた黒人の惨い死体映像なんかもある。
本作の主役でもあるジェームズ・ボールドウィンは紛れもなく西洋的な知識を身につけたインテリだが、彼のアメリカ白人に対するヘイトに共感することが出来なかった。ボールドウィン自身、自分を啓蒙してくれたのは美しい白人女性の教師だったと告白し、肌の色によるヘイトを拒絶するような発言をするが、本作後半の怒りにまみれたインタビューでは「白人たちはこんなにひどい」みたいなトーンになってしまっている。確かに理不尽な思いや暴力に虐げられることを「根底」に生きなければならない抑圧された生はあると思うけれど、本作に出演するすっとんきょうな白人インテリの「素朴」な疑問として「黒人の方が大声で叫んでいる問題って人種に関係ない議論では?」に対して論理で説き伏せて欲しかったなぁなんて思ったりもする。スパイク・リーよろしく、ただ呪詛をまいてるだけにも思えてしまった。エンドロール中のケンドリック・ラマーの曲も黒人であることに対して逆差別的でちょっと萎えてしまった。