ある愛の詩」を観る。

ある愛の詩 [DVD]

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すごく良かった。ベタなストーリーだけど泣きそうになってしまった。やはり、映像を見て「泣ける」ってすごいことなのかもしれない。それだけ物語に引き込んでいるということだから。最近どこかで読んだフレーズで、「小説にせよ映画にせよ、我を忘れて物語に没頭して、はっと気づいたら電車の中だったり映画館だった、という感覚を味わうのが良い作品」みたいなのがあったんだけど、これはなかなか言い得ていると思う。作り物ってことを意識させず、観客を意図する方向に綺麗にリードできる物語。
ベタということは普遍的なテーマでもあるので、老若男女国境を越えて共感できる力がある。愛する人と出会ってから失うまでの物語。
導入の雪の積もる椅子に独り腰掛ける男のモノローグに始まり、印象的な物悲しいピアノのフレーズが全編に響き渡り、大切な人を失った悲しみを決して大げさにならずに盛り上げる。大学時代、出逢ったばかりの二人が雪だるまを作ったり雪に飛び込むシーンをセリフのない音楽と二人の屈託のない表情がまた羨ましいくらいに美しい。この辺は「500日のサマー」みたいな初々しいやり取りが楽しい。そして、やんちゃで鼻っ柱の強かった学生時代から、病気が発覚してからの急激に憂いを帯びていく主人公ライアン・オニールの表情がいい。地位や裕福な暮らしなど色々なものを捨てて、それでも一緒にいたいと思った人との限られた時間が過ぎていく焦り。そして愛する人が自分と過ごさなかった未来の時間(ヒロイン・ジェニーは音楽を志してパリに留学しようとしていた)を奪ってしまったという自責に苛まれる姿は本当に共感できる。俺にも最後の時を一緒に過ごしてくれる人が現れるだろうか。この素晴らしい映画を見ながら、それを誰かと共有できない自分の境遇にまた悲しくなる。
そして、ジェニーを演じたアリ・マッグローがすごくチャーミング。絶世の美女という感じではないけども、ちょっとツンとした話し方とか笑い方、最後の時の表情まで、彼女の魅力に恋しなければ物語にのめり込めないと思う。なんか犬っぽい顔が可愛くて、加賀美セイラにちょっと似てる気がする。

この曲の歌詞を強く思い出したので、ここに貼っておこう。