「ISLAND STORY」を読む。

ISLAND STORY(アイランド・ストーリー)

ISLAND STORY(アイランド・ストーリー)

結構勧めてる人多いし、何となく南の島いきてぇーとかふと思って読んでみたけど、あまりの内容の無さに愕然とした一冊。高橋歩ってこんな書き手なのか…。世界一周から帰ってきた高橋歩夫妻が沖縄に移住し、仲間と共に自分たちの基地を作っていく、というような回想録。

まず、1ページにつき文章が長くても10行もないので、中身がすごく薄い。挟み込まれる写真は美しいが、いかにも南の島の楽園、的な構図から一歩も抜け出せない、決まりきった写真たち。なんだろう、カラオケの安っぽいビデオを見てるような気分にさせられる。あの、どうとでも解釈できそうな恋愛っぽいシーンをつなぎ合わせたような、それにより全く内容のない感じ。高橋歩関連の本ってヴィレッジバンガードをありがたがるちょいサブカルな人に受けてる印象があるんだけど、この本読んで楽しめるってイメージが貧困すぎやしないか。
著者に知性もセンスも全く感じられない。海の家を仲間と立てる時、どんなコンセプトの店にする?と言われて彼は「ボブ・マーリーのワンラブ!」と答えた。恐らく彼はルーツレゲエなんて聞いたこともないだろうし、ジャマイカの歴史も知らないだろうし、ワンラブがどんな経緯でできたかも知らないだろうし、もっと言えばボブマーリーの曲はワンラブしか知らないだろう。別に知識がなければいけないなんて言う気は毛頭ない。でも、教養がないせいで彼は自身が何より求める自由から遠ざけられている。彼に刷り込まれた、「何となく自由を象徴していそう」なアイコンであるボブマーリーやブルーハーツチェ・ゲバラのイメージに逆に囚われていて逃げることができなくなっているように思える。それぞれのアイコン自身の自由を求めて表現し続けた実際の活動ではなく、それらの持つイメージをただファッション的になぞっているだけ。彼にとっては、歴史や政治や経済は「小難しいこと」であり、自分の生活の営みとして捉えることがほとんどできないのだ(本書でも、小難しいことは苦手な俺、みたいな感じで語られる)。
まぁ、この中身がなくて元気だけが取り柄みたいな感じだから逆に人を引っ張れるのかもしれないが、少なくとも彼の著作には今後触れることはないだろう。

彼に言ってみたい言葉は「街へ出ず、(ちょびっとでいいから)書を読もう」