インサイド・ルーウィン・デイヴィス」を観る。

コーエン監督作。コーエン作品の中ではシリアスな方面の作品で、面白かった。1960年代初頭、ボブ・ディランが出てくる前のNYを舞台に、うだつの上がらないフォーク歌手が猫を片手にヒッチハイクを続けながら、大きなレコード会社との契約を結ぶためにシカゴに行ったり、闘病中の父を見舞ったり、姉の家に転がり込んだり、船乗りになろうとしたりと右往左往する様を描く。
脇役たちが皆魅力的。一番びっくりしたのは友人役のジャスティン・ティンバーレイクで、ギターの弾き語りで見事な生歌を披露している。あと、キャリー・マリガンは主人公に悪態ばっかりついてるけどいつも通りキュート。ジョン・グッドマンはヤク中の不遜なジャズマンを怪演。どうも登場人物たちにはモデルがいるらしく、もう少し当時のフォークシーンに対して知識があればより楽しめるかもしれない。
バックコーラスとして歌うんであれば契約してやる、みたいな誘いに頑として断ったり、友達の大学教授の家で、その友人の前で昔の曲を軽く一曲歌ってよ、みたいな軽いノリにも全く合わせられず激昂して拒否してしまうような音楽に対して純粋すぎる芸術家の姿に共感してしまう人も多いかもしれない。作中の季節は冬なんだけど、全体を通して画面がうす暗く寒々しくて哀愁漂う雰囲気が印象に残った。