「ぼくの道具」を読む。

著者のことを知ったのは意外と古くて、中学時代に読んでいたMens nonnoの連載を読んでたから。今考えるとあれは2000年前半だから、本書に描かれた道具達が活躍する前夜だったのではないか。当時から世界の文化や考え方に直に触れながら、それを素直に発信する彼の文章や美しい写真に、多感な頃の自分は結構影響を受けていた。というか、メンノンでビート文学とかサイケカルチャーやカウンターカルチャーを学んだ感は多分にある気がする。本書ではK2を始めとする様々な極地で生き抜いてきた著者の道具に対する思い出やこだわりをエッセイ的に語る。カラーの写真はやはり圧倒的に美しく、文章も飾らず砕けた感じで楽しめる。ガチなアイゼンやザックやトレッキングブーツみたいな本格的で山登りする上で参考になるものから(とはいえ、日本での登山に使うには余りにハイスペックかも、という注釈はある)、山で暇な時に観るDVDやkindleを使った読書方法みたいな「登山中の意外な余暇(?)の過ごし方」みたいな文章も面白いし、8000メートル級でのウンコの仕方とかテント内で寝ながらペットボトルに小便をするテクニックとかシモの話も面白い。後、日本のお洒落なセレクトショップで売られてるファッションのための登山着について嘆いてみたり、やっぱそうなんだなーと納得した。「全ての装備を知恵に置き換える努力をしつつ、自分にとって必要不可欠な道具だけを持って、未知の荒野を歩こう。道具によって縛られるのではなく、道具によって自由になる。」という締めの言葉に全面的に共感するし、こんな道具感で生きていきたいなと思う。要らなくなったモノをため込むのではなく、手放してすっきりして身軽に生きていきたい。