スリー・ビルボード」を観る。

新文芸坐にて、「シェイプ・オブ・ウォーター」と一緒に観る。面白かった。俺の大好物でもあるアメリカ田舎物語ものでもあったんだけど。主演はフランシス・マクドーマンドというすげぇいかついおばさんなんだけど、コーエン兄弟の「ファーゴ」のおばさんと知って、凄い納得感あった。とにかく登場人物たちが不細工で醜悪で、ひたすらエゴイスティックで人間臭い。現代社会の法やルールなんか糞くらえ、濃厚な人種差別や女性蔑視がごったまぜになり、理不尽な暴力と血の匂いがプンプン匂うアメリカ社会の膿を堪能できる。誰一人として友達になりたくないし関わりたくないんだけど、実は悪人も善人もいない、ただただ普通の人間が何とか繋がっている、という姿を描き出す濃厚な物語。
ラストシーンが度肝を抜くというか、「え?こんな結末?」という感じなんだけど、結局この結末に落ち着いたのかなぁなんて納得出来る感じもある、不思議なラスト。ずっとしかめっ面で攻撃的だった主人公が劇中初めて見せる笑顔に救われるという。
とは言え、個人的に惜しいのは、物語がサスペンスとしても機能しそうでしなかったという点。結局、最大の謎は明かされないまま終るんだけど、そこはすっきりしたいという思いもあり。謎が謎の終わった、ロシア映画の「父、帰る」を思い出しちゃったよ。